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高校野球リポート

佐々木朗希が決勝で対戦する花巻東との因縁

 

大船渡高・佐々木朗希は一関工高との岩手大会準決勝で15奪三振、2安打完封(5対0)と圧巻の投球を披露している


 決して「リップサービス」ではない。素直な意見として受け止めた。花巻東高・佐々木洋監督に昨秋、大船渡高・佐々木朗希(3年)の評価を聞いたことがある。

「コントロールが良く、ピッチングができる。真っすぐ一辺倒のタイプではなく、フォークなど変化球も良い。大谷の高校2年当時よりも上です」

 佐々木は昨秋の時点で最速157キロをマーク。岩手の甲子園常連校を率いる佐々木監督は、のちに「令和の怪物」と呼ばれる逸材を早い段階から警戒していた。今年4月には、2012年夏の準決勝(対一関学院高)で計測した花巻東高・大谷翔平(エンゼルス)の持つ「高校生最速160キロ」を3キロ更新する163キロをたたきだしている。

 冒頭の「大谷」とは大谷翔平(現エンゼルス)、そして菊池雄星(現マリナーズ)と2人のメジャー・リーガーを育成したのが佐々木監督である。再び出現した岩手からの超高校級ピッチャー。

この日の最速は157キロ。疲労が蓄積した準々決勝は登板回避し、中2日で迎えたこの日、異次元のピッチングを見せている


 佐々木を擁する大船渡高は7月24日、一関工高との準決勝を制して、1998年以来の決勝進出を決めている。2回戦(対遠野緑峰高)は2イニング、3回戦(対一戸高)は6回参考ノーヒットノーラン、4回戦(対盛岡四高)は延長12回、194球を投げ切った。疲労を考慮した久慈高との準々決勝は出場機会がなく、チーム力で4強進出。中2日で迎えたこの準決勝で最速157キロを計測し、15奪三振、2安打完封(5対0)と圧巻の投球を披露している。

 泣いても笑っても、あと1試合。準決勝の球数は130。やはり、疲れが気になるところではあるが、1984年夏以来、35年ぶり2度目の甲子園出場をかけた相手は、これ以上ない強豪私学・花巻東高だ。

 佐々木が入学以来、公式戦で同校と顔を合わせるのは初めてである。

 関係者の話を総合すると、花巻東高は3年前、佐々木の勧誘に熱心に動いたと言われる。大船渡一中時代、軟式ですでに141キロを計測していた地元の逸材に、佐々木監督がほれ込んでいたのも当然である。実際、佐々木は中学3年時にオープンスクールにも足を運んでいるが、花巻東高を選択せず、地元の県立校・大船渡高に進学している。ラブコールを送り続けた佐々木監督にとっても、特別な思いが詰まった一戦になるだろう。

大船渡高として1984年夏以来、2度目の甲子園まであと1勝。佐々木は仲間との夢を果たすため、明日の決勝(対花巻東高)で3年間のすべてを出し尽くすつもりだ


 なぜ、佐々木は甲子園常連校ではなく、地元の大船渡高を最終的に選んだのか。

「私立を倒したかったですし、中学時代から地元のメンバーとやってきて、この仲間となら甲子園に行けるんじゃないか? と。私立に行って甲子園に行くよりも、大船渡高校の仲間と甲子園に行くことのほうが難しいですし、でも、その中で行けた経験というのは、自分にもチームにもすごく良い力になる」

 まさしく、高校野球の集大成である。明日25日は岩手県営野球場で13時プレーボール。全国の高校野球ファンが注目する岩手頂上決戦となりそうだ。佐々木は仲間との夢を果たすため、3年間のすべてを出し尽くす。

写真=佐藤博
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