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週べ60周年記念

東京・飯島秀雄は明るい人だった?/週ベ回顧

 

 昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

福本豊は西本監督のお気に入り?


表紙は巨人王貞治


 今回は『1969年3月10日号』。定価は60円。

 10秒1(初出修正。すいません。間違えました)の記録を持つ、日本短距離界の王者・飯島秀雄。東京オリオンズに入団も慣れない野球に苦労していた。
 鹿児島・指宿キャンプでは紅白戦などで、まさに異次元の足の速さを披露しながらも、課題はスタートとスライディング。スタートはやはり投手のモーションに幻惑され、スライディングについては、どうしても足から行けず、頭から行ってしまうのだが、距離感が微妙でベースまで届かないこともあった。

 ただ、けっこう明るい人だったらしい。
 業務提携をしたロッテが、キャンプに来た人たちにガムを配っているのを見ると、「オレもやります」と箱ごと受け取り、
「えー、ロッテはいかが。甘くておいしいロッテはいかが」
 と売り子のように客席を回ったという(ガムが甘くておいしいはどうか、とも思うが)。

 飯島は言う。
「プロの世界はいいですよ。アマチュアのころは家を出るとき、競技場までの電車賃があるかな、と財布を確認する。腹が減っても、きょうはパンしか食べられないとか、金が少しあるから天丼を食おうとかいう程度。プロになってからは、その心配がない」
 不勉強ながら飯島は永田雅一オーナーのわがままに振り回された人にように思っていたが、(少し)違うらしい。
 記事のあちこちから新しい挑戦を楽しんでいる様子が感じられる。突き抜けた天才は、やはり少し違った感性を持っているのだろう。

 厳しさを前面に出したサンケイ別所毅彦監督が180度変わったという記事もあった。
 マイクを手に怒鳴りまくる別所監督がおとなしくなり、禁止されていたマージャン、アルコールがすべてOK、休日前夜は門限もなくなった。
 これは業務提携したヤクルト・松園尚巳オーナーの言葉からだ。
「野球は哲学でするものではないんだよ。ダイナミックで面白い野球をすればファンは見てくれる。求道者みたいな野球は必要ない」
 これで別所監督も厳しくしづらくなったらしい。

 2月26日にオーナー就任が決まった松園さん。選手にブレザーを与えたり、「優勝してブラジルに行こう」「キャンプは台湾」など、まずは球団を持ったことが楽しくて仕方がないようだ。

 飯島以外にも阪急でも俊足新人が話題になっていた。ちびっこ選手・阪急の福本豊だ。
 西本幸雄監督は流し打ちを嫌い、「強い打球を」といつも選手に言ったが、
 福本は、
「プロはスピードがあるから流し打ちでもするしかありません」
 といくら怒られてもケロリ。西本監督もついには、
「あいつは新人のくせに適当にさぼりよる。いい心臓の持ち主や。実戦向きの選手や」
 とお気に入りの様子だった。

 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM
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