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ホークス対ジャイアンツ日本シリーズ激闘史

2年連続で巨人の前に敗退も南海にレベルアップの手応え/ホークス対ジャイアンツ日本S激闘史【1952年】

 

10月19日から始まった日本シリーズに3年連続で出場したソフトバンク。南海、ダイエー時代を含めて頂上決戦に挑むのは19回目となるが、ここでは過去のホークス対ジャイアンツの日本シリーズでの激闘を振り返っていく。

最終戦に勝利してリーグ連覇


1952年、19勝を挙げた柚木はリーグ優勝の胴上げ投手にもなった


 2リーグ制となって3年目の1952年。前年の9月「サンフランシスコ講和条約」に署名、この年の4月29日公布され、日本と連合国の戦争状態が終了し連合軍の統治下から解放され、日本国民の主権が回復した年だ。

 プロ野球も改革があった。それまでフランチャイズらしきものはあったのだが明文化はされていなかったが、この年から完全フランチャイズ制が敷かれたのだ。とは言っても戦後7年しか経っておらず、プロが専用にする球場も数多くなかった。セ・リーグ、パ・リーグともに7球団の計14球団。そのうちプロ野球のメッカと言われた後楽園球場を5球団が本拠地としていた。南海ホークスは2年前に完成した大阪スタヂアムが本拠地となる。

「打倒・巨人」を目指し、まずはリーグ優勝を達成しなければならないが、この年は変則のペナントレースだった。7球団で各108試合を消化して、上位4球団が各12試合を戦うという方式とられた。

 南海は開幕12試合を9勝3敗のスタートダッシュだったが、毎日(オリオンズ)は10勝1敗の快進撃。前半は毎日を追う形となったが、南海は8月に入り10連勝をマーク、一気に抜け出し7球団のリーグ戦が終わった時点で毎日に6ゲーム差をつけていた。しかし4チームのリーグ戦になると毎日が息を吹き返した。10試合目まで8勝2敗の進撃を見せ、10月4、5日の南海との直接対決も連勝。最終の大映(スターズ)戦も勝利を挙げ75勝45敗で終了。南海はこの時75勝44敗1分けで大映戦を残すのみ。もし南海が敗れれば、毎日との優勝決定戦が行われることとなったが、10月9日の大映戦、エース・柚木進が好投し6対1で勝利し、わずか1ゲーム差で連覇を達成した。

 前年、四番・二塁だったプレーイングマネジャーの山本一人は監督に専念することが多くなり、二塁には新鋭の岡本伊三美を据え打率.299の活躍。一塁の飯田徳冶は86点で打点王を獲得。木塚忠助も55盗塁で4年連続盗塁王と前年よりパワーアップして、セ・リーグを連覇した巨人との日本シリーズに挑むこととなる。

2連敗から盛り返したが……


2年連続で山本監督(左)率いる南海、水原監督率いる巨人の日本シリーズとなった


 10月11日、後楽園でスタートした第1戦。巨人の先発は33勝をマークした別所毅彦。一方、南海はエースの柚木が2日前の最終戦で投げているため使えず、新人で8勝を挙げた大神武俊を起用。巨人は2回に投手の別所のタイムリーで先制すると、3回には四番の川上哲治の2ランで追加点を挙げる。南海は4回に先頭の蔭山和夫が四球で出塁すると、続く飯田がレフトスタンドに叩き込み1点差。四番・堀井数男が三塁打、五番・黒田一博がレフトに運びアッという間に同点に追いついた。しかし巨人も4回、二番手の中谷信夫を攻め、3本の長打で2点を勝ち越すと、最後は千葉茂のスクイズで6点目を挙げた。3対6で初戦を落としたが、山本監督は千葉のスクイズに「おちょくられてるようで何とも気分が悪い」と嘆いた。

 第2戦は、前年から苦手にしている藤本英雄を打ち崩せず4安打完封負け。藤本には本塁打を含む2安打4打点とバッティングでも叩きのめされた。

 大阪に移動した第3戦、南海は満を持してエースの柚木が登板。初回、二死一、二塁から五番・堀井が右翼線に二塁打を放ち2点を先制。柚木は丁寧なピッチングでゴロの山を築き、スコアボードに「0」を並べた。南海も2回以降は、巨人の先発・大友工に抑えられていたが8回、二死一塁から飯田の二塁打、堀井のタイムリーで2点を追加。柚木は巨人打線を6安打に抑え、16個のゴロを打たせ完封勝利をマークした。

 第4戦は終盤まで競ったが、またも別所を打ち崩せず2対6で敗れ王手をかけられた。

第5戦で1失点完投勝利を挙げた南海・江藤正


 第5戦は巨人が初回、打者3人で1点を先制するが、その裏、南海は苦手の藤本から飯田の二塁打で同点に追いつく。そして3回には投手の江藤正が左前打で出塁すると、続く一番・蔭山もヒットを放ち無死一、二塁。二番の木塚は投手前にボテボテのゴロを打つが、藤本が併殺を焦ったか、三塁に悪送球し無死満塁。続く島原輝夫の打球は強烈な一塁ゴロだったが、これを一塁・川上が本塁に投げ野選となり1点を勝ち越し。その後、中飛、内野ゴロで2点を追加し勝ち越した。南海の先発・江藤は9安打を浴びながら初回の1点に抑え完投勝利を挙げた。

 舞台を後楽園に移した第6戦。南海は中3日で柚木が先発。巨人は第5戦でKOされた藤本が中1日で先発。南海が初回に二番・森下正夫の2ランで先制したものの、5回に千葉の二塁打で同点とされ、6回に柚木の暴投で勝ち越された。打線は6回から登板した別所を打てずに2対3で惜敗。またも日本一にはなれなかった。しかしまったく歯が立たなかった前年より確実にレベルアップしているチームも垣間見えたシリーズだった。

写真=BBM
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