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最後のシーズンでタイトルを奪取した法大・朝山広憲。卒業後は社会人で2年後のプロ入りを目指す

 

法大の4年生右腕・朝山広憲はラストシーズンにして最優秀防御率のタイトルを獲得した


 後輩に、最高の置き土産を残した。

 法大・朝山広憲(4年・作新学院高)が東京六大学リーグ秋季リーグ戦で最優秀防御率のタイトルを初めて獲得した。先発、救援に5試合に登板して防御率0.68(26回1/3で失点2、自責点2)という好成績だった。

 作新学院高では1年夏から甲子園のマウンドを踏み、3年連続で夏の甲子園出場。父・憲重さんは1983年夏、PL学園高の主将として全国制覇を遂げた(2学年下には桑田真澄清原和博のKKコンビ)。輝かしい父のキャリアもあり、朝山は1年時から脚光を浴びる機会が多かった。

 ある意味、華やかな高校時代を過ごしただけに、法大では長く不遇の時間を過ごし、つらいものがあった。だが、決して現実から逃げ出さず、あきらめることもなかったという。

 高校時代から痛めていた右ヒジの状態が思わしくなく、四番・一塁で出場した3年夏の甲子園後に手術を受けた。法大入学から1年間はリハビリに費やし、リーグ戦デビューは3年春という遅咲き。リリーフでの登板が続き、ラストシーズンの今秋、早大2回戦(2番手で3回無失点)でうれしいリーグ戦初勝利。立大戦以降の4カードでは1回戦の先発。チームの主戦格として4勝(無敗)を挙げた。

「リーグ戦で投げるのが夢だったんですが、まさか、先発で白星を挙げることができるとは……。やってきたことが報われました」

 今秋、法大は第7週で全日程を終了。第8週の早慶戦を迎える段階で、防御率1位には慶大・森田晃介(2年・慶應義塾高)が0.00でトップに立っていた。だが、森田は早大2回戦で3回3失点と数字を下げ、2位だった朝山がトップに躍り出たのである。森田は3回戦に連投で先発も2回2失点と3位にまで数字を落とし、朝山のタイトルが決まった。

 実は早慶戦2回戦の夜、作新学院高で同僚の明大・添田真海(4年)から連絡が入った。

「お前、タイトル確定だぞ!」

 添田は今春、首位打者を獲得しているが、この秋の朝山と同様、早慶戦の結果を待つ身だった。かつての仲間の気持ちが分かるからこそ早速、メールしたのである。しかし、当の朝山は「添田からの連絡で初めて意識しました。本当かよ、と。今日(3回戦)は祈るだけでした」と内情を明かす。

 閉会式で表彰を受けると、トロフィーの「重み」で、タイトル奪取を実感した。


 卒業後は社会人で野球を続ける149キロ右腕。2年後のプロ入りを目指している。

「ドラフト当日、チームメートの宇草(孔基=広島2位)と福田(光輝=ロッテ5位)の名前がコールされる瞬間に立ち会い、興奮しました。人生は1度きり。自分も呼ばれるような選手になりたい」

 努力は報われる。「少しでも、後輩に良いものを残せたのならば、うれしいです」。集大成のシーズンに結果を残すのが最高の形だ。朝山は今秋、神宮で多くのメッセージを残した。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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