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ベースボールゼミナール

菊池雄星のMLBでの1年目のシーズンの評価は?/元阪神・藪恵壹に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。

Q.マリナーズに移籍した菊池雄星選手は32試合に先発し、6勝11敗、防御率5.46の成績でメジャー1年目のシーズンを終えました。良かった点、悪かった点を教えてください。また、来季に向けて必要なことはどんなことでしょうか。(神奈川県・15歳)



A.慣れないMLBの環境にアジャストするためのシーズンでした。勝ち星は伸びませんでしたが、32試合に投げたことが重要です


マリナーズ・菊池雄星


 正直に言えば、メジャー移籍1年目だけを切り取って、成功も失敗も言えません。彼にはマリナーズと結んだ契約期間がありますから、その期間でどれだけ成績を収めることができるかが重要だと私は思います。それに、MLBデビューのマウンドが日本で、しかもそれがイチローの引退試合にもなっていて、なかなか心のコントロールも難しかったでしょう。そこからシアトルに戻って再スタート。この1年は環境の変化にアジャストするための期間と考えてあげてほしいですね。

 とはいえ日本のファンの方は成績面をシビアに見ますから、そこ注目して見ていくと、まず、1年目から32試合に投げたというところが評価できるポイントだと思います。勝ち星が伸びなかった要因としては、メジャー1年目のルーキーということもあり、特にシーズン前半は球数に制限が設けられていました。抑えていても、球数を投げてしまっていたら5回までで交代。良くて6回までと言う試合が大半を締めました。32試合で161回2/3ですから、平均すれば5回ちょっとですね。1度だけ、調整のために先発のマウンドに立ちながら1イニング限定という試合もありましたね。

 MLBは継投が当たり前のリーグで、先発投手はそこそこのイニングを投げて試合を作り、中4〜5日で1年間ローテーションを回ることが求められる文化ですから、ルーキー年だけではなく今後も球数には注意が必要だと思います。私の見た印象ですが、少し力投し過ぎていたのではないでしょうか。常に100パーセントで投げていてように感じます。めいっぱい投げて、球速が150キロを超えてきても、力感あるフォームとボールにギャップがないので、バッターから見ればイメージどおりのボールとなってしまいます。

 160キロ(100マイル)まで行けば話は別ですが、150キロ台であればメジャーの打者は簡単に弾き返します。むしろ打ちごろの球速なので、振り負けは望めません。力感なく、リラックスして投げて150キロ。欲しいのはこのギャップではないでしょうか。打ちづらいですよ。

 チーム事情としてはパクストンが出ていき、その穴を菊池選手で埋めようと期待されました。キングことフェルナンデスも今年でFAに。マリナーズはいま、新たにチームを構築している時期にあります。菊池選手の来季以降の進化に期待したいですね。

●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。

『週刊ベースボール』2019年12月16日号(12月4日発売)より

写真=Getty Images
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