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ベースボールゼミナール

投手のパフォーマンスとランニングの関係性は?/元阪神・藪恵壹に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。

Q.子どもたちに指導をする機会が増えた者です。ピッチャーには「下半身が大切なので走りなさい」と言うのですが、なぜ走る必要があるのかを分かりやすく説明したいのですが、ぜひ、ピッチャーのパフォーマンスとランニングの関係性についてアドバイスをお願いします。(東京都・50歳)



A.ランニングにはその目的がちゃんとあります。ただし、パフォーマンスを維持するための1ピースです


イラスト=横山英史


 ピッチャーにとって何が大切なのか、これらの答えは人それぞれ少しずつ異なってくるので、ここからの話はあくまでも私の考えであることをご理解ください。

「下半身が大切なので走りなさい」は、確かに間違ってはいないと思います。特に質問の方は50歳ということですから、ご自身が若いころもそのような指導を受けたのではないでしょうか。ただ、当時の「走りなさい」の指導や、そこに含まれるニュアンスには、「ピッチャーはひたすら走っていさえすればすべてOK」のような意味合いが含まれているように感じられて、質問の方がそのような意味で考えているのだとしたら、それは間違いだと私は思います。

 ランニングの目的はまず、心肺機能を鍛えることにあって(つまりスタミナですね)、次に正しいフォームで走ることによって体幹を鍛えることにもつながります。体幹を鍛えることにより、ピッチングフォームの安定に直結し、バランスの良いフォームを習得しやすくなります(※つまり長いイニングを投げても、フォームが崩れにくくなるということです)。

 ただ、ひたすらランニングを繰り返したからといって、それだけで速いボール、強いボールを投げられるようになるかといえば、そうではありません。あくまでもランニングは土台であって、そこから肩のインナーマッスルのエクササイズを行い、ストレッチで柔軟性と肩甲骨などの可動域を広げ、それ以外のトレーニングで体全体を鍛える必要もあるでしょう。

 その中で投げ込むことによって正しいフォームを身につけ、正しいリリースポイントを理解し、ボールにスピンをかけるリリース時の指先の感覚も磨き上げていかなければなりません。どれか1つが欠けても、速いボールも強いボールも、はたまたコントロールも身につきはしないのです。

 質問の方はピッチャーのパフォーマンスとランニングの関係性のみに注目して質問をしてくれましたが、目的は前述したとおり。質問に対する答えとしては、ピッチャーにとってのランニングは「投球のパフォーマンスを維持するための1ピース」でしょうか。それがすべてではなく、過去のような「暇があれば走っとけ」の時代ではないということです。

●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。

『週刊ベースボール』2019年12月30日号(12月18日発売)より

写真=BBM
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