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丸3シーズンのブランクから慶大・関根智輝が完全復活する春

 

鮮烈な神宮デビューからの戦線離脱


慶大の本格派右腕・関根智輝。2年秋以降マウンドから遠ざかっているが、迎える今春、学生ラストイヤーに有終の美を飾るつもりだ


 2020年春の復活を、首を長くして待っている。

 慶大の147キロ右腕・関根智輝(新4年・都立城東高)は3年秋を終えて、通算5勝(2敗)をマーク。しかし、東京六大学野球連盟の公式サイトを見ると丸3シーズン、投手成績の項目がすべて空欄となっている。

 神宮デビューは鮮烈だった。2017年春、慶大としては宮武三郎以来、90年ぶりとなる1年春の開幕投手(対東大1回戦)を任されると5回1失点で勝利投手となった。春2勝、秋は3勝を挙げてリーグ優勝に貢献。2年春は右足首のねん挫の影響により出遅れると、シーズン中盤に復帰も力を出し切ることができなかった。ボールの走りは明らかに、前年に比べると劣っていた。18年6月3日の早大2回戦を最後に戦線離脱。つまり、2年秋、3年春、秋の成績が空欄となっている。

 ここで、大きな岐路を迎える。将来的な不安を取り除くため、右ヒジ手術に踏み切った。実戦復帰まで丸1年〜1年半が目安と言われ、この時点で関根の復帰は3年秋から4年春がメドとなった。昨年11月末まで慶大を指揮した大久保秀昭(現・JX−ENEOS監督)は開幕前の展望を語るたび、関根のコンディションに気を留めていたのが印象的だ。

 高校時代は「都立の星」としてドラフト候補にも挙がった逸材である。2年秋、3年春と東京都大会8強。3年夏の結果次第では、プロ志望届を提出する覚悟を決めていたが、大会前の胃腸炎により、万全とは言えない状況下で最後の夏を迎えた。甲子園で春1度、夏2度の優勝を誇る強豪・帝京高との準々決勝を制し存在感を示すも、準決勝で涙をのんだ。

 勝負の夏に、照準を合わせられなかった未熟さから、プロは断念。慶大進学に切り替えて、AO入試(書類審査、小論文、面接)の2期で、環境情報学部に入学している。1日10時間以上、机に向かったという勉強家であり、大学入学以降も学業を怠ることはなかった。

 関根がチーム本体から離れている間、慶大は昨秋に3季ぶりに東京六大学を制すと、明治神宮大会でも19年ぶりの優勝を飾った。歓喜の横で、関根は我慢するしかない。決して焦らず、今春の「完全復活」だけを見てきた。

チーム内の競争を勝ち抜いて


 身近には、勇気をもらう先輩がいた。1学年上の旧4年生・津留崎大成は慶應義塾高3年秋に右ヒジ手術を受け、復帰登板まで1年半を要した。リハビリ期間はストイックなまでのトレーニングをこなし、4年秋に才能開花。11試合中8試合に登板し、ブルペンを支えてリーグ制覇に貢献すると、ドラフトでは楽天3位指名。努力が実を結んだのである。

 慶大は「投手王国」である。昨年12月の大学日本代表候補合宿(愛媛・松山)には最速154キロの木澤尚文(新4年・慶應義塾高)、森田晃介(新3年・慶應義塾高)の右腕2人に、左腕・増居翔太(新2年・彦根東高)と3投手が参加した。さらには木澤、関根と同級生の151キロ左腕・佐藤宏樹(新4年・大館鳳鳴高)もドラフト候補に挙がっており、新2年生左腕・生井惇己(慶應義塾高)も素材の良さが注目されている。つまり、ベンチ入りするだけでも大変な競争が待ち受けているのだ。

 2年秋から3年秋まで、丸3シーズンのブランク。実戦感覚を取り戻すだけでも大変な作業に映るが、関根には「頭脳」がある。そして、周りが応援したくなる「人間性」がある。

 2020年春。神宮で「ピッチャー・関根」がコールされた際、慶大応援席に要注目だ。関根の歩んできた苦難の道を知っているからこそ、25人のベンチに入れなかった控え部員が大喝采で後押しするはずだ。その光景を目に焼き付ける日が、今から待ち遠しい。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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