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先発とリリーフの日々の調整やトレーニング方法は?【中編】/元阪神・藪恵壹に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。

Q.プロの世界では投手の完全分業制が進んでいますが、先発と中継ぎ、そしてクローザーでは投げるイニングや求められるスキルが違うので練習メニューも異なると思いますが、日々のトレーニング、オフのトレーニングなど違いを教えてください。(群馬県・18歳)


ヤンキース・田中将大


 前編の続きです。主に日本での先発投手のペナントレース中のトレーニングについて解説しましたが、中編ではまずメジャーの先発投手のスケジュールから説明しましょう。

 中5日でローテーションを回るとすると、登板日→(1)休養またはリカバリー→(2)ウエート→(3)ブルペン(あまり投げません)→(4)ノースロー/ランニング→登板日。このような形がベーシックでしょうか。日本との大きな違いは常に軽い状態(つまり完全にフレッシュな状態)で登板日を迎えるということですが、普通に考えれば、当然ですよね。練習ではなく、試合で100パーセントを出すことが大事なわけですから。

 次にメジャーのリリーフのスケジュールも見ていきますが、これは条件によって異なってきます。大体、試合で投げるのは1イニング20球までが目安で、仮に1試合で2イニング40球を投げたとすると、必ず次の登板まで中2日以上が与えられます。球数が抑えられても2イニング1デイオフ(休養)や、私の場合は37歳のシーズンからのメジャー移籍でしたので、1イニング1デイオフ(中1日での登板を繰り返す形です)といった具合に首脳陣が調整をしてくれていました。

 リリーバーに関しては、登板日の翌日の休養は主にリカバリーに充てることがほとんどで、早く体を元に戻すことが求められます。ちなみに、休養といっても、いわゆる完全オフの休日とは異なります。試合の中で休む。球場にいても、声は掛からず、ノースローで1日を終える、という形です。

 私は以前、このコーナーでも取り上げたことがあるSwimEx(流れる水の抵抗を生かし効率よく水泳やエクササイズ、リハビリができるプール)を行っていました。ホームでの登板の場合、その日のうちにSwimExに入ってしまいます。そうすると、連投もできるくらいに回復するのですが、さらに1日の休養(ノースロー)をもらうことで、軽い体で次の登板を迎えることができました。リリーフに関しては、日本でも同じで登板直前以外のブルペン投球はなく、ウエートも基本的には行いません。疲労を残すことは絶対にしてはいけないことで、とにかく次の登板に向けて回復に努めるわけです。

<「後編」に続く>

●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。

『週刊ベースボール』2020年2月3日号(1月22日発売)より

写真=Getty Images
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