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球界の論点

学生野球資格を回復したイチロー氏のユニークなアイデアに期待/球界の論点

 

プロアマの垣根をさらに低く


現在はマリナーズで会長付特別補佐兼インストラクターを務めるイチロー


 オリックスやメジャー・リーグのマリナーズなどで大活躍し、昨年3月に現役を引退したイチロー氏(現マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)が、高校生や大学生を指導するために必要な学生野球資格を取得した。昨年12月に東京都内で行われたプロ側とアマ側の2日間の研修を修了し、適性検査を経て、今年2月に資格回復が認められた

 従来ルールでは、プロ野球経験者が指導資格を回復するには所属球団を離れることが必要だった。イチロー氏は現在マリナーズに所属し、日本学生野球協会が求める指導者の資格回復条件を満たしていなかった。だが、これまでの日米球界への貢献度や、アマ選手へのスカウト活動を行っていないことなどを考慮。球団活動がないオフの期間に限定しての特例措置となった。

 同協会の内藤雅之理事は、「国内球団のプロ経験者も、同じように資格回復を認めるケースがあり得る」と、今後は個別に判断する可能性を示唆。影響力あるイチロー氏のアクションが、雪解けに務めていたプロアマの垣根をさらに低くするのに貢献した形だ。

 関係者によると、イチロー氏は研修の際に提出したレポートに、「いろんな意味で(球界の)お手伝いをしたい」という趣旨の考えを記していたという。米野球殿堂入りも確実視されているビッグネームが、日本の学生の指導者になれる資格に興味を示したことについて、日本高校野球連盟の田名部和裕理事は「イチローさんは世界の宝。学生野球振興の手伝いをしていただけるのはうれしい限り」と歓迎。最高の経験と実績を持つ同氏の動向に注目が集まることになった。

 これにより、マリナーズへの就業開始以前ならば母校の愛工大名電高(愛知)のコーチや監督としての指導が無条件でOK。同校以外の場合は学校の所属連盟への登録後に指導ができる。

 愛工大名電高によると、「まだこちらから指導をしていただくようなお願いはしていないし、今後も具体的な予定はない。ご本人からの連絡も入っていない」という。イチロー氏は高校や大学の監督として指導者の道を歩むのか。公の場ではっきりとした意思表示をしていないだけに、ファンにとっては気になるところだろう。

ビッグネームにしかできないやり方


 イチロー氏は昨年12月、オリックス時代の本拠地だったほっともっとフィールド神戸で、自らが作ったチームのメンバーとして「草野球デビュー」を果たした。対戦相手は智弁和歌山高の教職員チーム。背番号1の「九番・投手」として先発出場し、打っては4打数3安打1打点、投げては131球で6安打16奪三振の完封。二刀流で奮闘し、14対0の大勝に貢献した。試合には智弁和歌山高の吹奏楽部や応援団関係者らも詰め掛け、甲子園の応援でも有名な「ジョックロック」の演奏で盛り上がった。試合後は応援部員一人ひとりと握手を交わすなど交流。「草野球をやりたい」という気持ちに応えてくれた智弁和歌山関係者に感謝の意を伝えた。

 今回の指導者資格を取ったことで、ファンからは当然「高校野球の監督として、グラウンドに立ってほしい」という希望が出るだろう。しかし、一挙手一投足に注目が集まるビッグネームにしかできないやり方もある。現役時代は最高レベルのプレーで魅了。今は野球の楽しさをアピールし、それが裾野の拡大に役立つことができる。草野球で「めちゃくちゃ楽しかった。毎年やりたい」と笑顔を見せたイチロー氏の次なる手は何か。独創性に富んだ氏のユニークなアイデアに期待したい。

写真=Getty Images
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