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ベースボールゼミナール

山なりの緩いボールを打ち返す練習の狙いは?/元ソフトバンク・柴原洋に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は打撃編。回答者は現役時代に巧打の選手として活躍した、元ソフトバンク柴原洋氏だ。

Q.あるプロ野球選手のドキュメンタリー番組で、シーズン中に正面から山なりの緩いボールを打つ練習を繰り返し、「緩いボールを打つように速いボールを打ちたい。この練習を繰り返したことで速いボールへの対応が良くなった」とコメントし、飛躍的に打撃成績をアップさせた選手がいました。もちろん、この練習だけに取り組んでいるわけではないのですが、150キロを超えるような速いボールを打つのに、なぜ緩いボールを打つ練習が効果的なのでしょうか。(千葉県・16歳)


3度の三冠王に輝いた落合博満氏も緩いボールを打つ練習を取り入れていた


 山なりの緩いボールというのはアンダーハンドからのトスではなく、上から投げたボールのことと仮定して話を進めていきます。

 このようなオリジナルといいますか、工夫を凝らした練習は、それぞれ独自の目的意識を持ってやっているので、当の本人がどう考えているかは分かりませんが、練習の状況から推測すると、長くボールが見たい、その感覚を身につけたいのでしょう。速いボールであっても、ゼロコンマ数秒でも長く見てコンタクトしていきたいとバッターは考えるもので、それがほんのわずかな時間であっても、ストライクとボールの見極めに大きな影響が出てきます。

 また、緩いボールを待つことで体の割れを意識する時間をより長く持つことができます。その意識づけとしても有効に思いますし、つまりこれはフォームづくりの一環と考えることもできます。

 このドキュメンタリーに登場した選手がホームランバッターだとしたら、山なりの緩いボールの軌道(上から落ちてくるライン)に合わせて、下からバットを出し、芯に乗せて運ぶ感覚を身に着けることにもつなげているのではないでしょうか。この点に関してはタイプ的に合う選手、合わない選手がいそうです。

 そして最大の目的はタイミングの調整だと私は考えます。緩いボールに対し、体を回転させるのをこらえて、引き付けて、引き付けて、ココというタイミングでパッと体を回転させてボールをとらえていく。この切り返しのときにダラダラッと回転していては緩いボールでは飛距離を出すことができません。鋭い回転が必要で、かつポイントまで待って合わせていく技術も鍛えられるのではないでしょうか。120キロでも160キロでも同じで、タイミングが合わなければ良い結果は求められませんからね。

 もちろん、緩いボールを打つだけでは160キロは打てません。質問で登場する選手も、緩いボールから打ち始めて、段階を踏んでスピードボールでも調整をしていたのではないでしょうか。とはいえ、練習で160キロをガンガン打つこともありません。フォームが固まっていて、目さえ慣れれば、タイミングの微調整で試合の中では打っていけるものです。

写真=BBM

●柴原洋(しばはら・ひろし)
1974年5月23日生まれ。福岡県出身。北九州高から九州共立大を経て97年ドラフト3位でダイエー(現ソフトバンク)入団。11年現役引退。現役生活15年の通算成績は1452試合出場、打率.282、54本塁打、463打点、85盗塁。

『週刊ベースボール』2020年2月17&24日号(2月5日発売)より
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