
高橋氏(左)、大塚氏
「株式会社J.T. STRENGTH & CONDITIONING」の代表取締役社長として活動しているJ.T.(高橋純一)と申します。今回は私がメジャー・リーグのサンディエゴ・パドレスで通訳兼コンディショニング補佐をしていたときに通訳を担当した
大塚晶文投手(現
中日派遣コーチ)と2月に米国・アリゾナ州ピオリアで再会したことについてお話させていただきます。
大塚さんは現在、中日の国際担当として米国を拠点に3Aの試合を中心に視察しています。私がベイスターズ所属時代のフェ
ニックス・リーグ中に再会して以来の4年ぶりで、今回は3日間ほぼ一緒に帯同させていただいたのですが、現役時代と変わらない野球への情熱に身が引き締まりました。一人ひとりの選手に対し、「この投手はフォークを覚えればさらに良くなる」など目を輝かせて話していました。驚かされたのは現在もシャドーピッチングやトレーニングを行っていることです。現役の第一線からは退いていますが、大好きな野球への探求心はまったく衰えていないことをあらためて感じさせられました。
大塚さんとの出会いは2003年オフです。今振り返っても、大塚さんほどストイックな選手を今まで見たことがありません。試合に登板するまでの練習、生活で行うルーティンがきっちりしていて軸がぶれません。米国でも積極的にチームに溶け込みつつも、自分の強化したいポイントを首脳陣、フロントにしっかり主張していました。球場に入る時間、試合前のウォームアップ、エクササイズの流れ、試合でブルペンに入るタイミング、球数、食事に至るまで……毎日まったく変わりませんでした。細部までこだわるプロ意識はほかの選手がマネできない領域でした。この年はメジャーで日本人選手シーズン最多記録の73試合に登板。リーグ最多の34ホールド、防御率1.75と抜群の安定感でチームの信頼を得ました。私もサポートさせていただき、人生の財産になる一年間でした。

パドレス時代の大塚氏
大塚さんが試合で救援登板する時間は10分に満たないときもあります。しかし、その10分間で力を発揮するため、24時間を逆算して活動します。私の現在の理念の根底にある「コンディショニング=生きることすべて」は大塚さんから学んだもので、大塚さんとの出会いがなければ現在の自分はないと思っています。今回貴重な時間を一緒に過ごさせていただき、大きな刺激を受けると共に大塚さんとまた一緒に仕事をしたいと強く思いました。最後にですが、新型コロナウイルスの感染が拡大しています。日本だけでなく、米国や世界各国で猛威を振るっていますが、お互いに助け合って乗り切りましょう。1日も早く感染が収束して、野球を楽しむ生活が来てほしいですね。
文=インプレッション・平尾類