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ベースボールゼミナール

プロがバットを選ぶ基準は?/元ソフトバンク・柴原洋に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は打撃編。回答者は現役時代に巧打の選手として活躍した、元ソフトバンク柴原洋氏だ。

Q.プロ野球選手はある一定レベルの長さ&重さのバットを使っているものだと思っていましたが、昨季、パ・リーグの打率ランキング3位に入ったロッテの荻野貴司選手は春先、75センチのバットでシーズンに入ろうとしていたそうです。しかし、調子を落として結局は85センチのバットを短く持つスタイルに戻したそうですが、短いバット、長いバット、重いバット、軽いバットのそれぞれの利点等を教えてください。また、プロの平均的な長さ、重さはどれくらいですか?(千葉県・38歳)


現役時代の柴原氏。バット選びで重要視していたのは“振りやすさ”だという


 まず私の現役時代の例を挙げるとすると、33.75インチのバットを使っていましたので、85.72センチ(1インチ=2.54センチで計算)ですから、荻野選手とそんなに大きく変わりませんね。これを少し短く持って打席に立っていました。重さは920グラムです。今の選手たちと比較すると、この重さがかなり変わっていて、900グラムを切る軽いバットが主流となっているようです。ソフトバンクの松田宣浩選手などは880グラムのバットを使っていると聞きました。

 当然、軽いバットのほうがスイングスピードは速くなります。私も軽いバットを試そうと思ったこともありますが、ボールに対して力負けすることを嫌ってあきらめました。今の選手たちが軽いバットを使用しているのは、トレーニングやサプリメントの普及で筋力がアップし、体が大きくなっているからだと思います。私たちのころも、体の大きい山崎武司さんは900グラムを切るバットを使っていましたからね。

 また、軽いバットが主流となっている理由の1つに、手元で小さく、鋭く変化するボールへの対応も挙げられます。重いバットと比較して軽いバットのほうが操作もしやすく、スイングスピードも上がるので、手前まで引き付けてから始動することが可能となります。いまは140試合を超える長丁場ですから、レギュラー選手などは疲労がたまり、バットが触れなくなってくることを理由に開幕時から徐々にバットを軽くしていく工夫をしている選手もいます。

 長さの基準はこれはもう、好みとしか言いようがありません。長いバットは遠心力が利く分、飛距離が出て、短いバット(や短く持つと)に関しては芯に近い分、当てやすくなります。質問の荻野選手の例のように、75センチのバットを目いっぱい長く持って打つよりも、85センチのバットを10センチ余らせて短く持つほうがバランスがいいこともあります。

 私のバットは吉永幸一郎(元ダイエーほか)さんにもらって、それをベースにしたものでしたが、一番長く持つとしっくりこず、指2本分短く持つことでバランスが合いました。同じモデルでも多少の芯のズレがあり、このバットは指2本分、こっちは3本分と持つ位置も微調整し、目印をしていました。最終的に、大事にしていたのは振りやすさです。長さも、重さも、最終的な基準は振りやすさだと思います。

写真=BBM

●柴原洋(しばはら・ひろし)
1974年5月23日生まれ。福岡県出身。北九州高から九州共立大を経て97年ドラフト3位でダイエー(現ソフトバンク)入団。11年現役引退。現役生活15年の通算成績は1452試合出場、打率.282、54本塁打、463打点、85盗塁。

『週刊ベースボール』2020年3月16日号(3月4日発売)より
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