週刊ベースボールONLINE

球界の論点

明るい未来を構築するためにコミッショナーの権限強化を!/球界の論点

 

MLBは絶対的な決定権


斉藤惇NPBコミッショナー


 国内の新型コロナウイルスの猛威は相変わらずで、プロ野球も手探りの状態が続いている。当初5月6日までとされた政府の緊急事態宣言の対象期間は31日まで延ばされ、さらなる延期の可能性が出てきた。前代未聞の苦難を切り抜け、明るい未来を構築するためにはどうすればいいのか。球界のリーダーであるコミッショナーの役割は大きい。

 プロ野球は4月末に開かれた12球団代表者会議で、目標としていた5月中ではなく、6月以降に延期されたセ、パ両リーグの公式戦開幕について協議。会議後の記者会見で、斉藤惇コミッショナーは「感染状況を見ながらになるが、最初は無観客で開かざるを得ない」と語った。

 Jリーグと連携して設置した「新型コロナウイルス対策連絡会議」では、感染専門家から、「国の緊急事態宣言下では日程について話し合うのは難しく、仮に試合をしたとしても無観客で開催すべき」という提言が出されている。プロ野球は11日に予定している代表者会議で開幕日を決める方針だったが、月末まで緊急事態宣言が延長され、開幕時期やどういう形態で試合をするかなどもますます不透明となった。

 これらの事態を受け、12日に臨時のオーナー会議が開催されることが決まった。プロ野球はすでにセ、パ交流戦の中止が決まっているが、会議では開幕時期をはじめ、オールスターゲームの開催可否などさまざまな問題を話し合う予定。親会社の代表権を持つ各球団のトップが参加する実質的な球界の最高意思決定の会議で、コロナ禍に対する対応についての骨格となる方向性について審議される。

 日本のコミッショナーは、本場アメリカのメジャー・リーグ(MLB)同様、プロ野球に加盟する12球団の承認を受けて職務を任されている。しかし、絶対的な決定権を持たされているMLBに対し、日本はその権限があまりにも小さい。

 平成時代は巨人の渡邉恒雄、西武の堤義明ら良くも悪くも強烈な個性を放つオーナーが球界をリードしたが、今は突出した舵取り役がいなくなった。球界再編騒動で揺れたプロ野球は2005年以降、コミッショナーの在り方について改革に乗り出した。セへの人気偏重から脱却しようと地域密着の道などを模索したパが、経営改善や日本野球機構(NPB)内での発言力向上などを模索。その流れの中で当時の根來泰周コミッショナーがセ、パ両リーグ事務局をコミッショナー事務局へ一本化するなど、権限強化のための改革が行われた。だが、現実的にはコミッショナーの権限が強化されているとは言いがたい。

リーダーの決断、指導力が大事


 プロ野球の動きが各球団それぞれの思惑に左右されかねない不安定な状況は解消されておらず、今回のコロナ禍のような有事の際にもコミッショナーは自由に青写真を描くことが許されない。権限なきリーダーシップからは、事態を好転させる革命的な発想や解決法は生まれない。

 プロ野球は今、球界全体の経営基盤の見直しをはじめ、選手の年俸や契約のルール、フリーエージェント(FA)、ドラフト――など、潜在的なものも含めた多くの難題を抱えている。「アフターコロナ」に局面が移ったとしても、それは変わらない。災厄後に大きく変わる社会システムに連動し、球界がいかに柔軟かつ効果的に対応できるか。リーダーの決断と指導力が大切なのは、何も政治の世界に限った話ではない。プロ野球がファンの以前と変わらない支持を受け、次の時代に向けてさらなる繁栄を進めるためにも、コミッショナーというポジションの在り方ついて球界全体で考え直す必要がある。
 
写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング