週刊ベースボールONLINE

大学野球リポート

全日本大学野球選手権が中止。果たして夏の甲子園は――

 

安全、健康を最優先


8月12日から神宮で開幕予定だった第69回全日本大学選手権は、初の中止となった


 全日本大学野球連盟は5月12日、オンラインによる臨時理事会を開き、第69回全日本大学野球選手権大会(8月12日から9日間、神宮)の中止を発表した。1952年に始まった同大会が中止となるのは、初めてである。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、4月2日の同連盟の臨時常務理事会において、当初の6月8日から8月12日へ開幕を延期した。だが、4月6日に5月6日までの緊急事態宣言が政府により発令され、5月4日には31日まで延長された。刻一刻と変化する社会情勢を受け、各加盟校の選手、関係者の安全、健康を最優先とした末の結論となった。

 開催が難しくなった理由は「あくまでも、大学の野球部」(全日本大学野球連盟・内藤雅之常務理事)というのが、大前提としてある。

 各大学ではオンライン講義も始まっているが、授業は例年よりも明らかに遅れている。7月中旬から8月にかけて、試験期間に入る大学がほとんど。8月に全国大会が開催されるとすれば、全国26連盟は代表校を選出するための試合を開催しなければならない。

「無理な運営が予想される」(内藤常務理事)

 全国の大学の8割近くが構内立ち入り禁止となっており、ほとんどの野球部は1カ月以上、全体練習ができていない。早くて6月に活動が再開した場合でも、1カ月の調整期間が必要とされ、公式戦の開催は事実上、7月上旬以降となる。つまり、学生の本分である勉学に支障をきたす可能性が大いにあるため、先に全国大会を中止としたのである。

 5月11日現在で、全国26連盟のうち、2連盟(東都大学野球連盟、東京新大学野球連盟)がすでにリーグ戦の中止を決定。残る24連盟は「延期」や「再延期」「再々延期」など開催へ模索してきたが、見通しの立たない状況が続いていた。

 各連盟は今回の「中止」を受け、次なる対応へと移行する。すなわち「無理な運営」を回避できるのだ。活躍の場を失った部員、特に最後にかけた4年生は無念だが、「国難」「戦後最大の危機」とも言われており、人命には代えられないもので、受け入れるしかない。

 なお、この日の決定は、各連盟の春季リーグ戦を、一律に中止要請するわけではない。地域によって6月下旬、または7月以降に春季リーグ戦の開催が可能となった場合は、地方自治体や加盟大学とも確認のうえ、十分な対策を講じた上で判断するように各連盟へ通知した。ただし、緊急事態宣言中の対外試合(オープン戦)は禁止となっている。

 上部団体である全日本大学野球連盟のジャッジは、傘下にいる26大学連盟の立場からすれば、動きやすい環境が整ったわけである。

あくまでも高校の野球部


 さて「全日本大学野球選手権」を「全国高等学校野球選手権」(夏の甲子園)に置き換えてみる。全国47都道府県高野連の上部団体である日本高野連は、全日本大学野球連盟と同様、難しい判断に迫られていると言っていい。

 各都道府県の高野連関係者は、待たされている現状にある。日本高野連のジャッジがなければ、物事を前へ進めることができないからだ。甲子園があるのか、ないのか……。すなわち、代表校を決めるのか、決めないかにより、各連盟の地方大会の運営は大きく変わる。

 5月20日には、日本高野連による「第2回運営委員会」が行われ、夏の甲子園の開催の可否について協議される予定だ。全国47都道府県高野連(49地区)が主催する地方大会は「延期」を含めて、準備期間の日程を逆算しても、残された時間は少ないとされる。

 大学と同様、高校野球も「教育活動の一環」。あくまでも高校の野球部、である。休校が続き、夏休み期間が短縮されることにより、地方大会や甲子園が、授業を妨げてしまう可能性がある。各都道府県高野連としては、一日でも早く、方向性を導き出してほしいのが本音。いずれにしても「決定」を待つしかない。

文=岡本朋祐 写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング