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ベースボールゼミナール

リラックスして構えるとは?【前編】/元中日・井端弘和に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は内野守備編。回答者は現役時代、7度、ゴールデン・グラブ賞に輝いた、元中日ほかの井端弘和氏だ。

Q.2019年シーズン中の週刊ベースボールの遊撃手特集の企画で、井端弘和さんが巨人・坂本勇人選手の守備の連続写真を解説して、「12球団で一番リラックスして構えている」ことに触れていました。リラックスすることの利点と、どのようにしたらリラックスして構えることができるのか、教えてください。(千葉県・17歳)



 守っていて体に力が入ってしまう選手は、プロの世界にもたくさんいます。アマチュアではもっとでしょう。そのほとんどが意識して力を入れているわけではなく、いざボールが来るときに無意識に“入ってしまう(硬くなってしまう)”状態で、これに気付かずにプレーを続けています。巨人の坂本勇人選手の例を挙げることで、リラックスすることの利点が分かってもらえると思うので、解説していきます。

 今でこそ球界でトップのショートになった坂本選手も、初めは余分な力が体中に入っていました。高卒2年目でジャイアンツのレギュラーの座を手にしていますが、力みまくっていたおかげで、当時は、守備のすべてがバタバタしていた印象。そもそもの準備が遅く、しかも体に力が入るため、上半身と下半身の連動が生まれず、打球に対して立ち遅れて、捕るのもままならなければ、スローイングもあちらこちらに散らばっていました(投げる際にも余分な力が入っていました)。

 キャリアを重ねてプロのスピードや質に慣れてきた部分はあったものの、悪癖は私が2014年に巨人に移籍するまで変わりませんでした。チームメートとなって早い段階で「とにかく上半身の力を抜け」とアドバイスしたのを覚えています。本当は、下半身の力も気にはなっていたのですが、誤った受け取り方をしそうだったので、その場では「ヒザの力を抜け」と。その後、坂本選手も意識的に考えながら取り組んでいたのを見ていますし、センスのある選手ですから、良くなっていきましたね。今は12球団で最も力の抜けた良い構えで、早い準備もできていますし、これはアマチュアプレーヤーの方にもぜひとも参考にしてもらいたい部分です。

 リラックスとは、つまり力の抜けた状態のこと。両腕・両肩をダランとさせてヒザの力を抜いて、下半身もグラグラとさせてみてください。究極の理想はこの状態でボールに対応することです。打球を追わなければいけないので、その段階では下半身には力が入ってしまいますが、上半身はこれをキープするイメージ。練習では打球を捕球しなくていいので、上半身の力を抜いた状態でボールを追ってみてください。何となく、いつもと違ったボールへの入りを感じることができると思います。

<「後編」へ続く>

●井端弘和(いばた・ひろかず)
1975年5月12日生まれ。神奈川県出身。堀越高から亜大を経て98年ドラフト5位で中日入団。14年に巨人へ移籍し、15年限りで現役引退。内野守備走塁コーチとなり、18年まで指導。侍ジャパンでも同職を務めている。現役生活18年の通算成績は1896試合出場、打率.281、56本塁打、410打点、149盗塁。

『週刊ベースボール』2020年5月4日号(4月22日発売)より

写真=BBM
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