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【MLB】選手の安全は守れるのか、ガイドライン草案

 

MLBは感染対策を徹底する67ページのガイドラインを選手会に提出。その中には、国歌斉唱時も6フィートずつ距離をあけて並ぶなどの措置も盛り込まれている




 MLBが7月の開幕に向け前進している。35万人の感染者、2万2000人の死者(現地時間5月20日時点)と最も被害の大きいニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事が5月18日、プロスポーツ界に戻ってきて欲しいと発言した。

「わが州は再開に向けて動くプロ球団を支援する」と話した。同じ日テキサス州、カリフォルニア州の知事も同様の発言をした。その3日前、MLB機構は選手会に感染対策を徹底する67ページのガイドラインを提出。すでに多くのメディアで報じられているが、健康と安全を守るために今まで野球界で習慣だったことも、やってはならないリストに組み込まれたのだ。

 例えばダグアウトの中。ひまわりの種、噛みタバコ、共用ウォータークーラーは持ち込めない。ツバも吐けない。ハイファイブ、抱擁もなし、顔を触るサイン伝達もなし。ベンチの電話は使用後に常に除菌する。

 クラブハウスも個々のロッカー間を6フィート(約1180センチ)開けねばならないため、既存のものでは収まらず、第2クラブハウスを設ける。室内で集まるミーティングは避けipadなどを使用。サウナ、スチーム室、水治療用のプールは利用せず、試合後もシャワーを浴びずに帰宅する。

 食事はビュッフェスタイルではなく、個々に容器に詰められたものを手渡される。フィールド上では試合開始前のラインナップカードの交換はなく、国歌斉唱時も6フィートずつ距離をあけて並ぶ。守る野手はなるべく走者と距離を置き、投手はボールが滑っても唾液(だえき)ではなく個人用のロジンで滑りを抑える。

 半イニング、攻守が変わるごとに手を洗い除菌。フィールドにいるとき以外はマスクを着用する。遠征中は、公共の移動手段は使わずウーバーなどライドシェアも禁止。遠征荷物は多くの人の手に触れないよう直接部屋に運ばれる。

 選手はチームの許可なしに宿泊ホテルを離れてはならず、選手の部屋を訪れていいのは近い家族だけで親戚や友人もなるべく遠慮する。

 まだ草案の段階で、今後選手側や球団の意見を聞き完ぺきな内容に近づけていく。とはいえどれだけ細かく決めても、新型コロナウイルスについては依然分からないことの方が多いため、不測の事態が起こりうる。健康、安全面のリスクは大きい。そこは肝に銘じておくべきだろう。

 さてそんな中、サラリーについてMLB機構と選手会が揉め始めた。前回も書いたが、3月末の合意で試合数による均等割で年俸をもらうことになったが、オーナー側は無観客での試合を想定していなかったとして、選手側にさらなる減額を求めている。82試合無観客の場合、試合の度に赤字になり、総額44億ドルのマイナスになるという。だが選手会はその数字が信用できないとし、その試算を裏付ける細かい書類を提出し説明するよう求めている。

 実際、近年のMLBは空前の収益を上げ、地方球団のロイヤルズでさえ10億ドルで売却されるほど景気が良かった。にもかかわらず、この数カ月でひっ迫し選手にも球団職員にも給料を払えなくなるとはどういうことなのか。

 過去2年連続で選手の平均年俸を下げられたことも手伝い、不信の念を抱くようになっている。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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