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【MLB】MLBは7月に開幕できるのか、気になる選手会の足並みの乱れ

 

給与問題で選手会内も一枚岩になれていない選手会。クラーク専務理事がどういう手腕を見せるだろうか


 現時点でMLBは6月に21日間のキャンプを行い、7月初旬に開幕、9月27日まで公式戦82試合を戦い、その後、拡大プレーオフをと想定している。だがこれが給与削減案で機構側と選手会が合意できず、絵に描いた餅に終わるかもしれない。

 懸念は、選手会に足並みの乱れが生じていることだ。MLB機構の提案は、給料が高い選手ほど、大幅なカットをのむというもの。ネットメディア「ジ・アスレチック」によると、3500万ドルの高給取りは784万ドルと大幅カットで、元の22.4パーセントしかもらえない。対象的に最低年俸の56万3500ドルの選手は26万2000ドルで、当初もらう金額の46.4パーセントである。

 56万ドルから100万ドル、100万ドルから500万ドル、500万ドルから1000万ドル、1000万ドルから2000万ドル、2000万ドル以上と、年俸が上がれば上がるほど、もらえる「パーセント」が少なくなっていく。もともと最低年俸の選手にはプレーしたいという人が多い。自分の力を証明しなければならない立場だし、蓄えも少ない。

 一方で2000万ドル以上を貰う選手は、スーパースターで、すでに長期の複数年契約をもらっており、実力を証明する必要もないし、蓄えも十分にある。給料を20パーセントちょっとに減らされ、新型コロナウイルスの感染のリスクもある中、必ずしもプレーしたいとは思わないだろう。

 例えば、球界きっての高給取り、マイク・トラウト、ゲリット・コールはともに奥さんが妊娠中で、愛する妻と、お腹の中にいる赤ちゃんを危険に晒すわけには行かないのである。故マービン・ミラーが作り上げたMLB選手会は世界有数の強力な労働組合だと言われた。一枚岩で、強い団結心があったからだ。

 しかしながら現在のトニー・クラークが専務理事になってからは、MLB機構に対して後手に回ることが多く、指導力に疑問符が付けられている。そして今回、機構側の提案は、選手の個々の立場の違いをうまくつき、足並みの乱れを助長するものになった。

 機構側は「選手会にオファーをした。現在の私たちのスポーツの経済状況に沿った提案だ。選手会からの返答を待つ」と声明を出した。選手会は選手の意向に沿って、カウンターオファーを出さなければならないが、何が何でも試合をしたい人と、そうでない人がいる中で、総意をまとめるのは難しいのである。

 最初に書いた6月キャンプ、7月初旬開幕となるためには、来週(6月初旬)には労使が給与削減案で合意し、前に進まねばならない。だが関係者はそれが難しくなっていると明かす。

 現行の労使協定(CBR)は2021年シーズン後に失効する。18年、19年MLBは史上最高収益も選手の平均年俸は連続で下がった。30代のFA選手が良い契約を得にくい状況にもなっている。

 この仕組みを是正すべく、次の労使協定の話し合いに期待がかかっているが、クラーク専務理事に継続して任せて良いのかという不信の念は以前から出ていた。ネガティブな空気の中、選手会は立場の違いを調整し、総意を固め、MLB間で満足できる合意を勝ち取れるのか。いよいよ次の一週間が正念場なのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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