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一球入魂を体現した衝撃の本盗。青木宣親を彷彿とさせる打撃センスを誇る早大・瀧澤虎太朗

 

「自分の野球人生の中でもビッグプレーです」


早大・瀧澤虎太朗は攻守走の3拍子がそろう好選手。大学卒業後の「プロ志望」を明言している


 一球入魂。

 1901年創部の早大野球部における永遠のモットー。球界では一般的に使われているが、同野球部の育ての親である初代監督・飛田穂洲氏が野球に取り組む姿勢を説いた言葉だ。大正、昭和、平成を経て、令和の時代も語り継がれる学生野球の父が残した教えである。

 昨春の早慶戦で、1球に集中し、体現したのが瀧澤虎太朗(4年・山梨学院高)だった。1点を追う4回表一死二、三塁。三塁走者・瀧澤は慶大バッテリーのスキを突いて、同点のホームスチールを成功させた。8回表にはバックスクリーンの左脇へ運ぶ特大の決勝ソロアーチ。瀧澤の足とバットにより、早大が令和初の伝統の一戦を制している。

 衝撃の本盗。カウント2ボール2ストライク。捕手からの返球を受け、5球目の投球動作に入る直前に猛然とスタートし、本塁へヘッドスライディングした。ロジンを手にするこの約3秒の間に、自身の50メートル走6秒0の脚力であれば「行ける」と判断したのだ。その「1球」を、見逃さなかったのである。

「(相手の)高橋佑樹投手(当時4年・川越東高、現東京ガス)を半年間、研究して、そういう場面がきたら行こうと思っていました。チームメートにも黙っていましたし、打席にいた四番の加藤さん(加藤雅樹、当時4年・早実、現東京ガス)にも言っていません。2人だけの秘密でした」

 瀧澤は一番打者である。三塁に進塁しているということは、チャンスでクリーンアップの場面。勝手なプレーはできないだけに、早大・小宮山悟監督だけには試合前に伝えていた。

「自分の野球人生の中でもビッグプレーです」

 同春は打率.362、2本塁打、8打点、5盗塁の活躍でベストナイン初受賞。さらなる飛躍が期待された昨秋だったが、開幕直前の故障が影響し打率.074と不本意なシーズンに終わった。

「あり得ない数字。もうこうはなりたくない」

追い求めるのは力強いスイング


 プロ入りをかけた学生ラストイヤー。首位打者を目標にしていた今春だったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、リーグ戦開幕は延期。8月開催を目指して準備(1試合総当たり方式の勝率で順位決定)が進められている。

「なんで自分の代なんだ? と思いましたが、活動自粛期間中も目標を見失わずに、限られた環境で練習をしてきました。自分の体と向き合ってトレーニングを積むと、6月の再開後は明らかに、動きが変わった実感があり、良い時間を過ごすことができたと思います」

 右投げ左打ちの外野手。抜群の打撃センスは早大の先輩であるヤクルト青木宣親を彷彿とさせる。「振れないバッターでないと、上では通用しない」と、ソフトバンク柳田悠岐オリックス吉田正尚の力強いスイングも追い求める。一発長打があり、トリプルスリーを狙えるポテンシャル。そして、何よりも、昨春のホームスチールのインパクトが強く「何かをやってくれそう!」という期待感がある。早大の伝統である、目の前の一球に魂を注入する瀧澤のプレーが早く見たいものだ。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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