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川口和久WEBコラム

井納翔一、巨人でも「宇宙人」として暴れまわってくれ!/川口和久WEBコラム

 

移籍先で投手が活躍できない理由


ベイスターズ時代の井納


 井納翔一DeNAからFAで巨人入りを果たした。今年で34歳だから、昔なら先が見てくる年齢だが、今は選手寿命が長くなっている。あと5年は十分できるだろう。

 横浜の解説をすることが多いので、昔からよく見ているが、非常に能力が高い投手だな、とずっと思っていた。
 いいときは真っすぐとスライダーを中心の構成で、ポイント、ポイントでフォークを投げていた。

 ただ、このスライダーが彼の調子のバロメーターで、これがうまくいかないとフォーク、フォークになる。ただ、フォークがメーンの投球は1回くらいならいいけど、なかなか長いイニングは持たなかった。
 昨年に関しては、この2種類の変化球がどうこうではなく、真っすぐメーンの投球にしたのが、よかった。非常に質の高いストレートを投げていたが、真っすぐを軸に、怖い者知らずというのか、気持ちよく投げさせたほうがいいピッチングができるタイプだなとあらためて思った。

 俺が解説をしているときは、嶺井博希とバッテリーを組むことが多かったが、嶺井は打者の弱点を突くのがうまいキャッチャーで、そういうノリノリの井納とは相性が今一つかなと思った。
 だからだけではないと思うが、井納はよく捕手のサインにクビを振った。あれも宇宙人と言われる一因かもしれないが、俺も達川(光男)さんのサインにはよくクビを振ったし、それはそれでこだわりがあるからいいと思っている。
 昨年のようなピッチングができたら10勝くらいは十分できると思う。

 ただ、特に同一リーグに移籍した投手が新しい球団で、いきなり好成績を挙げるのは簡単じゃない。
 理由はいくつか考えられるが、一つは自分に関する情報が多すぎることだ。
 ジャイアンツは間違いなく井納のデータを集めまくっていただろう。入団すると、必ずそれを見せられ、さらに各コーチからあれこれアドバイスされる。
 それは味方目線とはまた違い、なるほどと思うことも多い。

 ただ、自分を知るためには、とてもいいことなのだが、情報が多いと、どうしても失敗を恐れ、守りに入りがちになる。
 投手と長所と短所は紙一重。白紙の状態で投げたほうがいピッチングができたりする。必要な情報、捨てる情報をセレクトしたうえで、井納にはサインにどんどんクビを振ってでも、攻めていく姿を見たい。
 井納よ、宇宙人と呼ばれたっていいじゃないか。地球より宇宙のほうがずっと広いんだから。
 無理に地球人にならず、宇宙人のまま暴れまくってくれ。
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