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編集部コラム「Every Day BASEBALL」

背番号28を背負ったルーキーの思い出

 


 中日の今季ドラフト2位、森博人(日体大)はスリークオーター気味のフォームから最速155キロを繰り出す期待のルーキー。中継ぎでの起用が濃厚だが、先発でも面白い。どちらにしろ、即戦力として期待されている。

 その森があこがれとする投手に挙げたのが、元中日の中里篤史だ。埼玉県の春日部共栄高から2001年、ドラフト1位で入団した右腕。ルーキーイヤーの9月、ナゴヤドームの巨人戦で一軍デビューを飾った。

 抜群の球威。打者の手元でグイッと伸びる真っすぐが魅力的な本格派だった。02年から星野仙一監督に代わって指揮を執ることになった山田久志新監督も「将来のエース候補として育てていく」と大きな期待を持っていた。

 その山田監督が声を失ったのは、2月の春季キャンプ中だった。中里が宿舎の階段でバランスを崩し、右手で咄嗟に手すりをつかんだものの、脱臼した。当初は時間が経てば復帰できると見られていたが、想像以上に深刻で重症だった。
 
 それからの中里は右肩との戦いを強いられた。2年間のリハビリ、さらに右肘も痛め、04年には背番号28から70へ変更された。それが何を意味するか。中里には十分すぎるほど分かっていただろう。

 プロ初勝利を挙げたのは05年のこと。06年と08年にはともに13試合に登板したが、1年目に見せた球威はついに戻らなかった。10年には巨人に移籍したものの、2試合に登板したのみ。翌11年に現役生活に別れを告げた。

 森は地元出身で小さいころから中日ファンだった。保育園児のとき、中里にナゴヤ球場でサインをもらったのが、あこがれるきっかけとなった。森は98年生まれだから、サインをもらったのは中里が復活を目指している時期だったかもしれない。

 中里のように「キレがあり伸びがあって、分かっていても打てないストレートにあこがれました」と森が言う。その森は中里が着けていた背番号28を背負ってプロの世界に飛び込んでいく。真っすぐにこだわり、目標は160キロだ。

 ちなみに中里は現在38歳。巨人のスコアラーを務めている。

※文中敬称略

写真=BBM
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