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プロ野球回顧録

通算2000安打まで135本…松坂世代で最も名球会に近かった右の長距離砲は

 

優勝できる環境を求め巨人へ


横浜、巨人(写真)で長距離砲として活躍した村田(右は同世代の杉内俊哉


 通算2000安打に惜しくも届かなかった選手は何人もいる。故障や体力、気力の限界など理由はさまざまだが、この選手は違う。もしプレーできる球団があったならば、間違いなく2000安打に到達していただろう。横浜(現DeNA)、巨人、独立リーグ・栃木ゴールデンブレーブスでプレーした村田修一だ。

 村田は1980年生まれの「松坂世代」だ。東福岡では3年の春夏に甲子園に出場。春のセンバツ3回戦・横浜高戦で相手エース・松坂大輔と投げ合い、0対3で敗れた。松坂の前に2安打零封負けの完敗だった。村田はスラッガーとしてだけでなく、快速球右腕の好投手としても知られていたが松坂は次元が違った。日大に進学すると、野手一本に。3年秋に井口資仁(青学大)と並ぶ1シーズン8本塁打を記録するなど、歴代2位タイの東都リーグ通算20本塁打をマーク。2003年、横浜に自由獲得枠で入団する。

 本職の三塁には同学年の古木克明がいたため二塁で出場するが、シーズン後半からは三塁のレギュラーに定着。9月に新人最多記録の月間10本塁打を放つなど、104試合出場で25本塁打をマークする。この時の村田は豪快さと脆さが同居していた。目の覚めるような一発を放つが、確実性を欠いた。06年は34本塁打を放つが、リーグワーストの153三振。
だが、自身の課題と向き合い、修正する能力が高かった。07年に打率.287、36本塁打で本塁打王に輝くと、08年は打率.323、46本塁打とキャリアハイの数字で2年連続本塁打王のタイトルを獲得。09年のWBCでは侍ジャパンの四番で打率.320、2本塁打、7打点。右足太腿裏の肉離れで途中離脱するが、日本の連覇に大きく貢献する。

 他球団のファンからは引退試合の「ガチンコ勝負」が波紋を呼んだ。07年10月6日の広島戦(広島市民)では引退登板の広島・佐々岡真司から左中間にアーチ。35本塁打で4人が並んでいたが、この一撃で村田が単独キングを決めた。10年9月30日の阪神戦(甲子園)は矢野燿大の引退試合だったが、村田が9回に藤川球児から右翼席に逆転3ランを放ち、矢野の出番がないまま終わった。引退試合では打者が三振や凡打で終わるのが通例のため、「引退試合クラッシャー」と揶揄されたが、真剣勝負を貫いた村田の姿に球界内では擁護する声も見られた。

横浜では1年目から主砲として活躍した


 7年連続20本塁打を放った11年オフ。優勝争いできる環境でプレーすることを望み、巨人にFA移籍する。巨人での6年間は横浜時代に味わったことのない試練を何度も味わった。移籍1年目の12年は全試合出場も12本塁打とプロ入り以来最低の数字に終わる。13年は打率.316、25本塁打と復調したが、15年は103試合出場で規定打席に届かず、打率.236、12本塁打。だが、このままでは終わらない。「本塁打を捨てる」と悲壮な決意で臨んだ16年は全試合出場で打率.302、25本塁打ときっちり結果を残した。


NPBで獲得球団が現れず…


 17年は新加入のケーシー・マギーが三塁で起用されたため、代打での起用が多かったが打撃の調子は決して悪くなかった。118試合出場で打率.262、14本塁打。だが、オフにチームの若返りなどを理由に自由契約を通告される。三塁の守備力は高く、打撃も全盛期に比べると衰えたが、まだまだ戦力として十分に計算できる。球団フロントの恩情で自由契約のほうが他球団に移籍しやすいと目論んだのだが、獲得に名乗りを現れる球団が現れない。

 18年3月に独立リーグ・栃木ゴールデンブレーブスに入団。NPB復帰を目指したが叶わず9月に現役引退を発表した。NPB通算1953試合出場で打率.269、360本塁打、1123打点。1865安打と2000安打まであと135安打だった。

 18年9月28日。古巣同士の対戦となった巨人対DeNA戦(東京ドーム)で村田の引退セレモニーが行われた。「未練がないと言ったら嘘になるかもしれませんが、自分が選択して歩んできた道に後悔はありません。いつも応援してくださった皆様、支えてくれた皆様、本当にありがとうございました」と感謝の言葉を口にすると、巨人ファン、DeNAファンから「村田コール」の大歓声が。村田の背番号「25」を継承した当時DeNAの筒香嘉智、巨人・岡本和真から花束を受け取ると目を真っ赤にした。

 19年から巨人のコーチを務め、今年から一軍野手総合コーチを務める。現役生活は終わったが、「男・村田」の野球人生はまだ道半ばだ。

写真=BBM
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