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センバツ2021

「最弱」から一気に頂点へ駆け上がるか。明豊の戦いから目が離せない/センバツ2021

 

「低評価」が原動力に


明豊は昨秋の九州大会4強。3年連続5回目のセンバツ出場で、2年ぶりの4強進出。準々決勝では昨秋の近畿大会優勝校・智弁学園(奈良)を下し、勢いに乗っている


 3月19日に開幕したセンバツ高校野球は大詰めだ。2日間の雨天順延があり、29日までに準々決勝を終え、30日は休養日。3月31日は準決勝(天理−東海大相模、明豊−中京大中京)、4月1日は決勝で、残り3試合を残すのみである。

 準決勝進出校の中で唯一、優勝経験がないのは明豊(大分)である。2012年9月からチームを率いるのは、智弁和歌山OBの川崎絢平監督。自身、甲子園初さい配となった15年夏こそ初戦敗退も、17年夏は8強、19年春は4強、そして、今春は2年ぶりの4強進出と、躍進ぶりは目覚ましいものがある。

 昨春のセンバツにも選出(大会中止)されており、3年連続出場。今回は過去のチームと比較して「最弱」と言われてきたという。甲子園常連校ともなれば、常に全国レベルを意識しており、現場が求めるハードルも高くなる。明豊に限らず、各強豪校においては「最も力がない」「チーム史上最弱」と、部員たちに奮起を促すのは、よくあるケースだ。

 明豊もこの「低評価」が原動力となった。

「甲子園で上まで行くために、明豊へ入学してきた生徒たち。何よりも反骨心、ハングリー精神がある」。川崎監督は決して、難しいことを求めなかった。チームの約束事は「走力、粘り強く、しっかり守ってから」。努力を積み重ねれば、成果を得られる分野である。基本の反復。試合へ向けては準備の大切さ。この2つを積み上げ、力をつけてきた。

「力はなかったが、冬の練習を通じて、チームの状態は上がってきた。私が思っていた以上に、高校生の成長はすごい」(川崎監督)

 今大会は東播磨との1回戦で延長11回サヨナラ勝ち(10対9)。「甲子園1勝」が自信となり、市和歌山との2回戦では大会屈指の好右腕・小園健太(3年)を攻略した(2対1)。準々決勝では昨秋の近畿大会優勝校・智弁学園(奈良)を下した(6対4)。一戦一戦、たくましさを増している。

 3試合で無失策と、鉄壁守備を誇る。「1週間500球以内」の球数制限が導入されているが、複数投手制を敷く明豊とは無縁だ。大型右腕・京本眞、左腕・太田虎次朗、右サイド・財原光優とタイプの異なる3投手が控える。野手も智弁学園との準々決勝で先頭打者本塁打を放った主将・幸修也(3年)をけん引役に、打線に切れ目がない。

 準決勝は注目右腕・畔柳亨丞(3年)を擁する中京大中京。明豊の戦い方は、相手がどこであろうと変わらない。川崎監督は「派手なことはしなくていい。堅実に。特別なことをするのではなく、取り組んできたことの精度を上げてくれればいい」と語る。チームの目標は日本一。「最弱」から一気に頂点へ駆け上がるのか。明豊の戦いから目が離せない。

文=岡本朋祐 写真=牛島寿人
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