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センバツ2021

「見るも無残なボコボコ」な夏の敗戦から6年。準優勝に輝いた明豊・川崎監督にない達成感/センバツ2021

 

現状維持は後退の始まり


明豊は東海大相模との決勝でサヨナラ負け(2対3)も、堂々の準優勝。甲子園を引き揚げる際には、ネット裏に残った多くのファンが拍手を送った


 甲子園は来る場所ではない。
 甲子園は勝つ場所である、と。

 明豊・川崎絢平監督は2015年夏の苦い思い出を忘れることができない。12年9月に就任から初の甲子園出場へ導いた。

 しかし、仙台育英との1回戦で1対12と大敗。「見るも無残なボコボコ……。もう、こういう思いはしたくない」。智弁和歌山では1年夏に全国制覇を経験するなど計3度、甲子園の土を踏んでいる。指導者として見る、高校球児あこがれの舞台はまったく違った。

 地域、学校関係者、父兄、野球部OB……。数え切れないほどの人たちに支えられている。試合終了後、アルプススタンドであいさつへ向かうと、その重大さにあらためて気づいた。

 甲子園出場が目的ではない。
 甲子園で勝ち上がるのが目的である、と。

 この2つには、大きな差があった。真剣勝負をしている以上、満足をしてはいけない。15年夏の敗退以降、川崎監督は指導の方向性を大きくシフトチェンジした。

 2年後の夏(17年)に8強進出を遂げると、19年春は4強。昨年のセンバツは出場を決めながら中止という現実と向き合った。そして、3年連続出場となった今春は、大分県勢54年ぶりの決勝進出(同校初)と躍進を遂げた。

 東海大相模との決勝ではサヨナラ負け(2対3)。「勝てるチャンスもあっただけに、何とか勝たせてやりたかった」。1967年の津久見以来となる県勢のセンバツ制覇を逃し、川崎監督は無念を口にした。

 達成感はまったくない。現状維持は後退の始まり。身をもって感じている。

「準優勝の喜びより、準優勝になってしまったという悔しさをもって、明日から進んでほしい」

 この日の観衆は8500人(今大会は上限1万人)。三塁側の明豊アルプス席は上限の1000人に迫るほど、多くの関係者が声援を送った。閉会式後もネット裏にはファンが残り、マウンド付近での記念撮影を見守った。2015年夏の敗戦から6年。明豊ナインは間違いなく勇気と感動、活力を送り届けた。甲子園を引き揚げる際の大きな拍手が、その証しであった。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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