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「ずっと見えないし、それでいい」ロッテ・佐々木朗希の思考力

 

3月12日、中日とのオープン戦で実戦デビューを果たしたロッテ佐々木朗希。落ち着いたマウンドさばきを見せた


 実戦登板なく終わった1年目──。ただ、一軍帯同で目の前ではチームメートたちが試合に向けて準備をしている。選手ならば、試合に出たいと思わないわけがない。「もちろん、投げたかったです」と佐々木朗希は即答したが「でも……」と付け加えた。

「気持ちもコントロールしないといけない。監督、コーチを含めて、いろんな方の話を聞いて、今、自分ができる最善を尽くすために、やらなければならないことを取り組もう、と。そうやって気持ちをコントロールしていたんです」

 トレーニングに終始する中で鍛えられたのは体ばかりではない。心をコントロールしたことで、思考力を養うことにつながった。体づくりの1年を振り返る。

「どうしても、トレーニングとなると、(体の)耐久性に目がいきがちなんですけど、ムダを省いてやらないと、どんなに耐久性というか、体の強さがあっても生きてこないのかな、と。例えば、『100』の耐久性があっても、1球投げるのに10を使ったら、10球しか投げられない。でも、1ずつの消耗だったら100球投げられる。体の強さ、耐久性と消耗率のバランスを取り、両立していきたいと考えているんです」

 昨年、ブルペンで試投してフォークと投げ分けていたスプリットの意図も明確だ。「(スプリットは)今は投げ分けていないんです」と明かす理由は「投げ分けるようにするのが目的ではなく、フォークの感覚を磨くため。深い握りで落ちないのなら、『浅い握りだったら落ちるのかな』って」と、確かな理由がある。自らの成長を支える思考力は、大きな武器になる。それは本人も自覚している。

「これからも考えていきたいし、考えることも武器にしたいんです」

 では、自ら描き、そして追い求める理想の投手像は何なのか──。右腕の思考力をのぞいてみたくなり、聞いてみた。返ってきたのは「(理想は)ずっと見えないと思いますし、それでいいと思っているんです」。

 進む道に意味はあるも、その先のゴールを描かないのは「完成はない」の思いから。1つひとつの課題と向き合う今は「まだうまくなる通過点」。だから、2年目の今季を終えた自分の姿を想像してもらえば、こんな答えになる。

「う〜ん……、技術的な課題を見つけていたいですね。明確に『これがダメだった』と言えるように」

 今季はファームで実戦登板をこなし、現在4試合に先発して計14イニングを投げ、5安打2失点、13奪三振、3四死球、防御率0.64と好投を続けている。2年目のテーマは「試合で投げること」であり「投げて勉強する」こと。5月中の一軍デビューも視野に入りつつある“令和の怪物”だが、マウンドに上がった今季を終えれば、何を学んだと話すのだろうか──。最速163キロの快速球に注目が集まる一方で、成長を支えるその思考力も見逃せない。

写真=BBM
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