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「捕手は監督の分身」 最高の栄誉「優勝キャッチャー」へ突き進む慶大の主将・福井章吾

 

リーグ戦初の三番で


慶大の主将・福井章吾は立大1回戦(5月15日)の2回裏に右越え3ラン。チームも11対4と快勝。この試合から八番から三番へ昇格し、堀井哲也監督の期待に応えた


 正捕手に定着した昨春、秋と2季連続でベストナイン受賞。慶大の主将・福井章吾(4年・大阪桐蔭高)は素直に喜べなかったという。

 1人しかいない「優勝キャッチャー」こそが、最高の栄誉だと考えているからだ。

 東京六大学第6週は、立大が慶大に2連勝すると2017年春以来のリーグ優勝が決まるという星勘定だった。

 慶大は立大1回戦(5月15日)を11対4で快勝し、この週のリーグ制覇を阻止。慶大は6勝1敗(立大は5勝1敗1分け)で単独首位に立っている。

 福井はこの試合から三番へ昇格した。今春、開幕から6試合は八番。開幕カードの法大1回戦こそ無安打も、以降は5試合連続安打と打撃好調を買われた形である。

 郡司裕也(現中日)が卒業し、レギュラーとなった3年春は全5試合を八番で先発。同秋は七番が2試合、六番が3試合、五番が5試合という内訳だった。2年秋に1試合(五番)のクリーンアップ経験があるものの、三番はリーグ戦初の打順であった。

「(四番の)正木(智也、4年・慶應義塾高)が相当なマークをされているので、その前後を固めたいと思い三番・福井、五番・下山(悠介、3年・慶應義塾高)を起用しました」(慶大・堀井哲也監督)

 慶大は1回裏に3点を先制。福井は2回裏一死二、三塁から右越え3ランを放った。貴重な追加点となり、試合を優位に進めたのである。この試合、福井は初回の右前打に、3つの四球を選び、全5打席(4打点)で出塁。下山も2安打2打点と、打線がつながった。

「監督の意図をくみ取って、役割を果たそう、と。正木につなぐことを考えていました」

 しかし、本塁打の打席は違ったという。

「(ネクストで)正木に言ったんです。『(次は)任せた』と。後に良いバッターが控えている。保険の意味ではないですけどね(苦笑)。その結果が、ホームランになりました」

 自分が決めてやろう! と重圧をかけるのでなく、その真逆。気楽にスイングできたことが良かったという。立大投手陣対策として内角をさばく特打を繰り返し、その成果が出た。

数字に表れない貢献度


右翼席に陣取る慶大応援席には「フクイ」の文字。体育会野球部は應援指導部とともに神宮で戦っている


 攻守に存在感を見せたが、数字に表れない貢献度も見逃せない。福井はかつて、自身の置かれた立場についてこう言ったことがある。

「キャッチャーは監督の分身」

 目配り、気配り、心配り。福井のプレースタイルを表すには、最も分かりやすい表現だ。正真正銘のリーダーとしてけん引している。

 第3週2日目から第4、5週は無観客開催だったが、第6週からは有観客(上限5000人以内)に戻った。左翼席、右翼席では、応援部(団)による応援も再開した。お馴染みのメロディー。やはり、東京六大学野球と応援は運命共同体である。この間、無観客開催を3試合戦った福井は言う。

「(観衆が)入ったほうが、気持ちは入る。目の前の戦いに集中する。しっかり準備をする。一戦必勝です」

 慶大は2019年秋以来のV奪還を目指している。「優勝キャッチャー」へ突き進む背番号10。主将の背中は、日に日に大きくなっている。

文=岡本朋祐 写真=矢野寿明
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