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一死一、三塁で一走がスタート、三走にホームを狙わせる作戦で注意すべきことは?【後編】/元中日・井端弘和に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は走塁編。回答者は現役時代、たびたび好走塁を披露した元中日ほかの井端弘和氏だ。

Q.一死走者一、三塁、どうしても1点を加えたい場面で、一塁ランナーがスタートし、キャッチャーが送球する間に三塁ランナーにホームを狙わせるサインがあります。このときの一塁ランナーのすべきこと、三塁ランナーがホームを陥れやすいスタートのタイミングや、注意すべきことを教えてください。(神奈川県・16歳)


4月15日の中日戦[東京ドーム]で重盗を決め、ホームを陥れた巨人の三走・梶谷


A.三塁ランナーがスタートしそびれてしまった場合は一死なら自重。二死なら相手の動きを見てスタートを切る

 前編の続きです。盗塁を成功させるためのスタートではないので、一塁ランナーにいわゆる「良いスタート」が必要ないこと。このとき、三塁ランナーは通常どおりのリードをとり、通常どおりにシャッフル。キャッチャーが二塁に投げるモーションに入った瞬間にスタートが基本であることを説明しました。

 4月15日の巨人対中日(東京ドーム)で、アウトカウントこそ異なりますが、これとまったく同じプレーが見られました。巨人3点リードの3回二死一、三塁から、一塁ランナーの亀井善行選手がスタート。中日捕手の木下拓哉選手が二塁への送球モーションに入り、リリースをする直前に三塁ランナーの梶谷隆幸選手がホームへスタートを切り、送球を受けた遊撃手の京田陽太選手は捕球後、ホームをチラリと見ましたが、間に合わないと判断したのでしょう。途中でストップした亀井選手にタッチに向かいました。ただ、これを亀井選手がすり抜け、オールセーフ。仮に亀井選手がタッチされていたとしても、梶谷選手のスタートが良く、得点は認められていたと思います。キャリアのある選手らしい重盗(ダブルスチール)でした。

 仮にこの場面で三塁ランナーがスタートを切れず、一塁ランナーが一、二塁間で挟まれた場合はどうするか。一死であれば、二死三塁で仕方がないと割り切るしかないでしょう。一塁ランナーが挟まれて、一、二塁間で粘っていたとしても、そこでミスがあった場合を除いて、ホームを狙う必要はありません。これが二死だった場合、どちらが殺されてもチェンジですから、一塁ランナーは何とか粘り、三塁ランナーはホームを狙うタイミングをうかがいます。

 守備側が一塁ベース方向に追っている場面ではその分、三塁ランナーはホーム方向に出ることができるため、相手が深追いしたときにチャンスが生まれます。野手が一塁側に追えば追うほどホームに投げるときの角度も厳しくなるからです。逆に野手が二塁方向に追うときは、三塁ランナーはややベース側に戻らなければいけないものの、狙い目は野手が二塁方向に追っていき、二塁側にいる野手に投げたその瞬間です。捕ってから急いでモーションに入り、長い距離を投げなければなりません。三塁ランナーの瞬時の判断と、一塁ランナーの粘りが求められます。

<「完」>

●井端弘和(いばた・ひろかず)
1975年5月12日生まれ。神奈川県出身。堀越高から亜大を経て98年ドラフト5位で中日入団。14年に巨人へ移籍し、15年限りで現役引退。内野守備走塁コーチとなり、18年まで指導。侍ジャパンでも同職を務めている。現役生活18年の通算成績は1896試合出場、打率.281、56本塁打、410打点、149盗塁。

『週刊ベースボール』2021年5月10日号(4月28日発売)より

写真=BBM
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