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「一瞬一瞬をかみ締めてもらいたい」神奈川大会の抽選会開催。176チームが目指す甲子園

 

開会式は実施せず


6月5日、夏の神奈川大会抽選会が横浜市内で開催。各校1人が出席した176チームがクジを引いた


 いよいよ、高校野球の夏がやってくる。甲子園の出場権をかけた神奈川大会。昨年は新型コロナウイルスの影響で中止(神奈川県高野連主催の独自大会が開催)となったため、2年ぶりに行われる。

 大会は7月10日に開幕するが、晴れ舞台であるはずの開会式は実施されない。約3000人が入場行進する「感染リスク」と「試合開催」を天秤にかけた際、後者が取られた。大会主催者側としては「苦渋の決断」であったが、1回戦から決勝まで「部員の安全と安心」の下、計175試合を円滑に消化し、甲子園への代表校を決めることが優先された。

 加盟191校のうち、189校が参加。連合チームは8チーム(21校)で、176チームで頂点が争われる。6月5日、横浜市内で抽選会が開催。各チーム1人の代表者は入場者カードを記入し、検温、消毒の上で会場に入り、距離を取って着席。誰一人として言葉を発する者はおらず、静寂の中で各校がクジを引いた。

 開会式中止により、出場校が一堂に会する機会は、この抽選会しかない。大会委員長である神奈川県高野連・榊原秀樹専務理事は、176チームに4つのメッセージを送った。

 勝てば、あこがれの舞台・甲子園に近づく2年ぶりの夏。負ければ終わりのトーナメントであり、相当な重圧が予想される。

「昨年は中止。積み上げてきた3年生にとっては、あまりにかわいそうでした。3年生への花道を、と各加盟校へのヒアリングを経て、独自大会を8月上旬から開催しました。メンバー変更も自由と、3年生に忖度した大会でしたが、最後までよく頑張ってくれました。今年は甲子園をかけた予選で、違った緊張感があると思います。試合前夜はワクワクしてなかなか寝つけず、寝不足になるかもしれません。とはいえ、そういう経験は、めったにできるものではありません。その時間も楽しんでほしい。試合会場に到着し、バスから一歩踏み出したその瞬間から、一瞬一瞬をかみ締めてもらいたいと思います。メンバーに入れなかった部員は、苦楽をともにした仲間たちを応援してください。私たちは、輝いてもらえるように、全力でサポートしていきます」

見られているという「責任」と「自覚」


 夏に輝くためには、万全の調整が必要だ。

「感染症予防対策、熱中症対策。ありとあらゆることを想定して、準備をしてください」

 連合チームへも、熱きエールを送っている。

「部員不足の中でもあきらめず、最後の夏に挑もうと、よく頑張ってくれました。最後までやり抜いたことは、今後の人生に生かせる」

 そして、最後に参加校へこう訴えかけた。

「全国屈指の激戦区。神奈川を制する者は全国を制す。いつの時代からそう言われていますが、優勝するのは大変なことです。ここまで盛り上がる地区は、全国のどこを探してもない。日本一、盛り上がる大会であると自負しています。優勝が最高の結果だと思いますが、それがすべてではありません。1試合、1試合を、全力プレーしてほしいです。ハツラツとしたプレーが、苦しんでいる方々に、勇気と元気を与えてくれると思います」

 注目度が高い大会であり、多くの視線が、高校球児へ向けられる。選手としてみれば、この上ない幸せな時間であるが、同時に、見られているという責任と自覚が求められるのだ。

 176チームの出席者は背筋をピンと伸ばして、榊原専務理事の言葉に耳を傾けていた。抽選会を終えた参加者は学校へ戻り、結果を報告することはもちろんのこと、主催者側の「申し合わせ」を共有するという重要任務もある。

 決勝は大会が順調に進めば、7月27日に予定される。今年は東京五輪開催予定のため、横浜スタジアムが使用できず、メーン会場はサーティフォー保土ヶ谷球場。コロナ禍で従来とは異なるイレギュラーな運営が続くが、無事に全日程が消化されることを祈るばかりだ。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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