3年前に創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 張本放出はデマ?
今回は『1973年2月5日号』。定価は100円。
1月22日のスポーツ新聞Sで「張本トレード」の記事が出た。
日拓ホーム・張本勲の移籍話は、オフの風物詩のようなものであるが、
田宮謙次郎監督との確執が深まり、その田宮監督と西村昭孝オーナーの会談直後の記事で、S紙は田宮監督と近い関係にあっただけに「今回は本物か」という声も多かった。
交換要員に挙がっていたのが、南海の
村上雅則と近鉄の
神部年男。「左腕が足りない」は田宮監督の口癖でもあった。
ただ、ほかの新聞記者からは「
長嶋茂雄引退後を見据えた
巨人が有力では」と言う声もあった。
翌23日、その巨人とまったく別にトレードが実現。東映の完全試合男、
高橋善正と巨人の
渡辺秀武、
小坂敏彦の交換だ。
高橋は、「巨人は日本一の球団だし、そこで投げるのは男冥利に尽きる。先発ローテーション入りして期待に応えたい。心機一転頑張ります」と抱負を語り、
川上哲治監督も「彼の
シュートはセにはない。面白い存在だ」と期待を寄せた。
裏情報として巨人担当記者の言葉で、「巨人は張本に渡辺、小坂とあと内野手1人を用意したらしいが、日拓側は左腕の
高橋一三を要求した。巨人は
堀内恒夫、高橋一三以外の投手陣で、このオフの補強を進めており、この段階で物別れとなった」というのがあった。
ほか社会人チームの「日拓ホーム」を解散させ、
大室勝美らのプロチーム入りも発表されている。
西村オーナーは「張本の話はデマ」と言いながらも、「トレードの必要性はあります。チームを強くすることもあるが、ファンをあきさせないためにも必要ではないでしょうか」ときっぱり。
また、「日拓ホームは秋にプレハブを売り出す。それに社運をかけているようだ。フライヤーズの結果次第ではイメージダウンにもなりかねない。そのとき責任を取らされるのが、田沢代表と田宮監督ではないか」というH紙記者の話もあった。
普通に考えればSがサン
ケイ、Hが報知のように思うが、そのあとの動きを考えれば、必ずしもデマとは言いづらい話ばかりではある。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM