週刊ベースボールONLINE

背番号物語

【背番号物語】大島康徳「#40、#5&#11」背番号で振り返る“負くっか魂”。3つの背番号で紡がれた3つの物語

 

代打の頂点に輝く「40」、激動の「5」


日本ハム時代の大島


 現役26年、所属したのは2チーム、背番号は3つ。特に通算2000安打を超えるような選手には自らを象徴する1つの背番号が存在することが多い一方で、長い現役生活で移籍を経験して複数の背番号を着けた選手には、下積み時代やキャリアの最後で着けた背番号など、どうしても埋没してしまう背番号があることが少なくないものだが、3つの背番号で、それぞれ違った物語を紡いだ名選手となると、グッと存在が希少になってくる。

 大島康徳が日本ハムで最後に背負った「11」は、後継者のダルビッシュ有大谷翔平がメジャーで活躍していることで改めて注目されているが、全盛期を過ごしたのは中日の「5」。ただ、中日でプロ入りした際に与えられた「40」も負けていない。時代によって、それぞれの背番号に深い思い入れがあるファンもいるはずだ。

【大島康徳】背番号の変遷
#40(中日1969〜76)
#5(中日1977〜87)
#11(日本ハム1988〜94)

 中学まではバレーボールの選手で、本格的に野球を始めたのは中津工高だったが、3年の秋にドラフト3位で中日から指名されて、1969年に投手として入団。「40」の5代目となる。ちなみに2代目は、甲子園の優勝投手で、10球団による争奪戦を経てプロ野球で初めての“入札制”で入団した空谷(児玉)泰。前任の4代目は、のちに名スカウトとして名を馳せる法元英明だった。

中日入団から8年間は「40」を着けていた


 とはいえ、「40」は当時、大きな期待を集めた新人が着けるナンバーだったとはいえない。水原茂監督の指示で、すぐ打者に転向。早くからパンチ力は発揮したものの、不器用なタイプで、安定感を身に着けるのには時間を要する。それでも、71年6月17日のヤクルト戦(中日)で右中間へ2ラン本塁打を放つ豪快な一軍デビュー。翌72年には初めて規定打席に到達したが、先発で出場すると安定感を欠き、控えに回ると代打として別格の長打力を見せることの繰り返しに。11本塁打の76年には代打だけで7本塁打を放ったが、これは現在もプロ野球の頂点に輝く数字だ。

77年から87年は「5」を着けた


「5」に変更となったのは、そのオフのことだった。ちなみに、この76年に続く「41」に変更したのは、のちにクリーンアップを組む谷沢健一。また、「40」の後継者となったのはトレードを拒否して「3」を剥奪された藤波行雄で、藤浪は左の代打を中心に長く中日を支え続けている。

 中日の「5」は、「15」で永久欠番となった西沢道夫が支配下として初めて着けた由緒あるナンバーで、のちに中日でも日本ハムでも監督と選手の関係となる近藤貞雄も歴代にいるものの、まだ当時は背番号を象徴する選手は不在。中日の「5」が、新たな輝きを放ち始めた。

集大成の「11」


日本ハムでは「11」で活躍した


「5」1年目の77年は三塁手として27本塁打、一塁に回った79年には初めて全試合に出場して36本塁打を含むリーグ最多の159安打。82年には外野に転じ、近藤監督の下でリーグ優勝に貢献、西武との日本シリーズでも第5戦(西武)で先制ソロを放つなど存在感を発揮して、翌83年には36本塁打で本塁打王に輝いた。中日の「5」で本塁打王となったのは現時点で唯一。ちなみに、72年と77年、つまり「40」と「5」で1度ずつ、イニング2本塁打の大爆発もある。また、最終的に内野と外野の両方で1000試合を超えることでも異彩を放つことになるのだが、その原点は中日の「5」にあった。

 プロ20年目となる88年に日本ハムへ移籍。新たに背負ったのは、すでに投手ナンバーの筆頭格としての印象が確立していた「11」で、もともとは投手だったとはいえ、ここでも異色の存在となった。新天地でも打線の中軸を担い、守っては一塁手に“復帰”して、2年連続で全試合に出場。90年8月21日のオリックス戦(西宮)では通算2000安打に到達した。2290試合での到達は当時もっとも遅く、39歳10カ月での達成も当時の最年長だった。ただ、「11」を背負って2000安打の瞬間を迎えたのはプロ野球で最初のことだ。

 92年からは代打に回ることが増え、ラストイヤーの94年には時に四番打者も務めたが、いずれも26年間で経験している役割。シーズン21安打で22打点を稼いでいるが、この数字が、集大成のシーズンだったことを雄弁に物語っている。通算2638試合出場、8105打数2204安打、382本塁打、1234打点、打率.272。

文=犬企画マンホール 写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング