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清原和博に阻まれた野茂英雄の開幕戦ノーヒットノーラン。光山英和が“あの1球”に直球を選択した理由

 

近鉄・野茂英雄


 現在、週刊ベースボール編集部では1990年代のプロ野球の歴史を振り返る回顧本を作成中だ。7月下旬に発売される1990年編では“時代の証言者”として、楽天光山英和バッテリー兼守備戦略コーチにインタビューを行い、ルーキーイヤーの近鉄・野茂英雄との思い出を語ってもらった。その際、野茂との一番印象に残っている試合を聞いたところ、1994年の“あの試合”を挙げくれたのだが、年代が違うということで割愛したため、ここで紹介したい。

“あの試合“とは94年の開幕戦だ(対西武、西武球場)。光山にとって「先が思いやられるシーズンが始まったな」と感じる一戦となったそうだ。

 この試合で野茂は8回までノーヒットノーランを続けていたが、9回裏に先頭の清原和博にヒットを打たれ、偉業達成は消滅。だが、野茂の気持ちは切れていない。得点は3対0。マウンドに来た鈴木啓示監督が「お前に任せた」と野茂に伝え、このまま完封勝利で試合を終えるつもりだった。しかし、その後、ピンチが拡大して満塁となると野茂は前年まで2年連続でセーブ王を獲得していた赤堀元之と交代させられる。鈴木監督の前言撤回に野茂はもちろん、全選手が「なぜ?」という疑問が頭に浮かぶ中、赤堀は伊東勤に開幕戦史上初の逆転サヨナラ満塁本塁打を浴びてしまうのだった。

 光山の脳裏に焼き付いているシーンは、もう一つある。

 それは、この9回の清原との勝負だ。初安打を許したのはストレート。サインに対し野茂が首を振ることはなかった。そこには光山の考えがあったからだ。それまで清原に対し、野茂は「首を振ると真っすぐを選択する」というのが定番になっていた。カウントは2ボール1ストライク。光山はフォークボールを選択したいという気持ちがあったが、野茂はそれを拒否する可能性が高いと感じていた。首を振れば清原にストレートだと読まれてしまう。それなら、最初からストレートを要求したほうがいい。野茂はうなずき、ストレートを投じたがライトオーバー。“光山−野茂バッテリー”との勝負に勝ったのは清原だった。

「先が思いやられるシーズン」の始まりにはさまざまな思いが交錯していたのだ。94年、近鉄はあと一歩のところで優勝を逃し、そのオフ、野茂はドジャースに移籍した。今でも語り継がれる一戦。それは選手だった光山の中にも色濃く残っている。

文=阿部ちはる 写真=BBM

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