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[MLB]メジャー・リーガーなしでも層の厚いアメリカ代表 カギは監督の求心力か

 

有能な選手が招集されたアメリカ代表。その個性を一つにまとめることを智将・ソーシア監督ができるか……楽しみである


 1992年のバルセロナ五輪から正式種目になった野球で、アメリカが金メダルを獲得したのは2000年のシドニーだけである。このときからプロも参加できるようになったが、今と一緒でバリバリのメジャー・リーガーは入れず、元メジャー・リーガー、ベテランマイナー・リーガー、プロスペクトの寄せ集めといった構成だ。

 当時五輪連覇の王者キューバや、トッププロ8人をそろえた日本には敵わないと予想されていた。だがアメリカは層が厚く、プロスペクトは数年後にはメジャーのスター選手になるかもしれない人材だ。

 このときはベン・シーツ(元ブリュワーズ)、ロイ・オズワルト(元アストロズ)らがいて、特に当時22歳のシーツは第1戦で松坂大輔と投げ合い、互いに譲らぬ好投、延長13回マイク・ニールのサヨナラ本塁打でアメリカが競り勝った。

 決勝のキューバ戦でも103球で3安打完封、胴上げ投手となったシーツ。その後メジャー8シーズンで7度の2ケタ勝利、4度オールスターに選ばれている。このときのメンバーには20歳のC・C・サバシアもいたが、首脳陣がリリーフ起用を決めると、在籍していたインディアンズがそれでは出せないと引っ込めた。

 打撃でヒーローになったのはダグ・メンケイビッチ。99年はツインズでレギュラー一塁手となったが打率.229、2本塁打で、00年はデビッド・オルティーズにとってかわられ、3Aに落ちていた。韓国戦で大活躍。予選では8回二死から均衡を破る満塁本塁打。準決勝でも2対2の9回裏にサヨナラ本塁打である。メンケイビッチは01年からメジャーに定着、04年はレッドソックスの世界一メンバーになった。

 このような具合に、アメリカにはその時点でメジャー・リーガーでなくてもいい選手はいる。だから今回も一番手強い相手だ。マイク・ソーシア監督は「2A、3Aに在籍する良いアスリートがそろった」と説明。野手ではトリストン・カサス一塁手(レッドソックス)、投手ではシメオン・ウッズ・リチャードソン(ブルージェイズ)、シェーン・バズ(レイズ)などである。彼らを支える元メジャー・リーガーは野手ではトッド・フレージャー、投手ではデビッド・ロバートソンら。

 とはいえそんなアメリカも勝てるかどうかのカギはいかに短期間にチームとして一つにまとまれるか。その点で00年のチームにはあのトミー・ラソーダ監督(当時73歳)がいた。士気を鼓舞する能力は芸術的ですらある。五輪前には「オーストラリアにはこれまで8回招待されたけど、遠過ぎて行かなかった。だが今回は国に頼まれたから。国のためなら月にでも行く」と宣(のたま)った。

 NBAのようなドリームチームではなく、寄せ集めだと周囲に揶揄(やゆ)されても、選手には「みんなで歴史をつくるぞ」とはっぱをかけ、勝ち星を積み重ねる度に「このメンバーで2年間一緒にやればワールド・シリーズに勝てる」と持ち上げた。

 そしてキューバを破って金メダルを取ると「五輪はワールド・シリーズよりも大きい。ドジャースが勝ってもドジャースファンしか喜ばないが、五輪なら国中が喜んでくれる」と涙を流した。ラソーダ監督の求心力は唯一無二だが、短期間で結果を出すために、ソーシア監督にとってもそこがカギになると思うのである。


文=奥田秀樹 写真=Getty Images

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週刊ベースボール編集部

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