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2021夏の甲子園

「ボールの内側をたたけ」確固たる技術の裏付けから飛び出した横浜1年のサヨナラ3ラン【2021夏の甲子園】

 

「次につながってよかった」


横浜の1年生・緒方漣広島新庄との1回戦で逆転サヨナラ3ランを放った


■8月11日 1回戦
横浜3x−2広島新庄

 開幕前々日(8月8日)のオンライン会見。横浜で愛甲猛氏(元ロッテほか)以来と言われる、1年夏で背番号1を着けた左腕・杉山遥希(神奈川大会は背番号15)は、今大会へ向けて、こう意気込みを語っていた。

「最後の夏だと思ってやっています」

 1年生ながら、負ければ終わり。この熱き思いは、同級生に共有されていた。甲子園では杉山以外に遊撃手の緒方漣(背番号6)と小野勝利(同18)がベンチ入り。

 広島新庄との1回戦(8月11日)は、0対2で最終回を迎えた。土壇場の二死一、三塁から逆転サヨナラ3ランを放ったのが「一番・遊撃」で出場した緒方だった。

 なぜ、この土俵際で打てたのか。緒方は言う。

「3年生と1日でも長くやりたい。次につながって良かったです」

 緒方は今春の県大会から背番号6を着けた。村田浩明監督は言う。「学年は関係ない。全員がライバル」と、完全実力主義を打ち出している。もともとは鉄壁の守備力が買われての起用。春の段階で、打撃面はやや力負けしている印象があったが、夏に向けて急成長した。166センチ63キロながら、コンパクトなスイングでパンチ力もつけてきた。

 今夏の県大会は一番打者として、打率.455、7打点と打線をけん引。10四死球と選球眼の良さも際立っていた。甲子園では持ち味の軽快なフィールディングを披露。高い才能を発揮した。

「夢のような打席でした」

 気持ちだけではない。劇的サヨナラ弾の裏付けとして、確固たる技術もあった。

「監督からボールの内側をたたけ、と、打席で体現しようと思いました。人生で一番、良い当たりでした」

 歓喜のホームインは、3年生が出迎えてくれた。整列後、勝利の校歌を聞き終わると一礼。そして主将・安達大和ら3年生は広島新庄の一塁ベンチへあらためて、深々と頭を下げた。相手へのリスペクト。常日ごろから言われている「感謝」の姿勢を示したのである。1年生・緒方ら下級生はこうした先輩の背中を見て、次世代につなげる伝統としていく。

 2回戦は智弁学園(奈良)と対戦。緒方が尊敬する3年生との夏はまだ、終わらない。

文=岡本朋祐 写真=牛島寿人
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