手際よくグラウンドを整備
3日連続での順延を経た8月15日。第3日の第1試合(明桜−帯広農)は雨天により、3時間遅れの11時開始で準備が進められた
報道陣の開門は第1試合開始(8時)の90分前に設定されている。8月15日、6時30分の時点で、甲子園は雨が降り注いでいた。
7時前になると、激しさが増し、内野の土部分は完全に水浸しになっていた。この段階で8時の試合開始は現実的に難しいと思った。学校関係者の開門は7時。場内には大会歌『栄冠は君に輝く』が流れる。しかし、入場してきたのは帯広農の部員5人程度だった。
7時2分。大会本部から第1試合の開始時間を遅らせるとの広報連絡が入る。5分後には天候の回復を待って、4試合を開催するとの場内アナウンスもあった。決勝は8月27日。閉幕後の
阪神戦(対
中日)は31日から組まれており、日程的な余裕はほぼない。大会主催者側としては、是が非でも試合を消化したい強い意向があったのは間違いない。
小雨となった8時55分、阪神園芸と関係者が一塁ベンチ前で打ち合わせ。すると、9時過ぎに雨が上がった。9時16分に阪神園芸がグラウンドに出てきたが、確認作業を終え、いったん、控室に下がっている。
9時28分。本格作業が開始。9時30分には第1試合の11時開始がアナウンスされ、大会本部からは第2試合は13時30分、第3試合は16時、第4試合は18時開始予定との広報連絡が入った。
阪神園芸は手際よく、整備をスタート。内野の水溜まり部分にはスポンジを入れ、フェンス際の人工芝部分の土をシャベルで取り除くと、天然芝の外野は特殊ローラーで水抜き。10時過ぎには水たまりがなくなった。マウンドと本塁のシートを外し、入念に土をならす。
10時13分に明桜(秋田)と帯広農(北北海道)の選手が室内練習場からグラウンド入り。空が明るくなってくると、10時25分には球場外からはセミの鳴き声が聞こえてきた。
10時28分に明桜のシートノックが開始(7分間)。その後、帯広農も軽快な動きで試合前の調整を終えた。晴天の日は、グラウンド整備カーが内野を回るが、この日は手作業(トンボとブラシ)による丹念な整備である。
10時59分にプレーボール。雨が止んでから約2時間後に試合が開催できるという神業である。土のグラウンドでは到底考えられない、迅速な作業。阪神園芸のプロの職人技には、いつも驚かされる。今後も天候不良と向き合うことが続きそうだが、甲子園には大会運営を影から支える、心強い存在が控えている。
文=岡本朋祐 写真=牛島寿人