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サイクル安打を達成したヤクルト・塩見泰隆「“入り”が難しい」一番打者は苦手?

 

4年目で果たした飛躍



「人生初めてで、相当うれしかったです」

 満面の笑みを浮かべたのはヤクルト・塩見泰隆だ。9月18日の巨人戦(東京ドーム)。初回の第1打席で右前打を放った塩見は3回に三塁打、4回に本塁打とサイクル安打に王手をかける。そして迎えた6回の第4打席。高梨雄平が投じた内角低めのスライダーを鋭く振り抜くと、打球は左翼線へ。一塁を駆け抜けた塩見が二塁に到達し、史上71人目、76度目となるサイクル安打を達成した。

 2018年、JX-ENEOSからドラフト4位でヤクルトに入団した塩見。高い身体能力を誇っていたが、なかなか一軍に定着できなかった。ファームでは18年に48試合出場で打率.329、9本塁打、26打点、22盗塁、19年も74試合出場で打率.310、16本塁打、52打点、23盗塁と格の違いを見せるが、一軍では結果が残せない。故障も重なり、18年は打率.040、0本塁打、19年は打率.182、1本塁打に終わった。

 しかし高津臣吾監督が就任した昨年は6月19日の開幕戦・中日戦(神宮)に「五番・中堅」で抜擢されると、2戦目の同戦で右翼に叩き込む本拠地神宮初アーチ。打率1割台に落ち込んだ時期もあったが、辛抱強く起用する指揮官の期待に応えた。故障で戦線離脱した時期もあったが、43試合出場で打率.279、8本塁打、21打点、13盗塁と飛躍のきっかけをつかんだ。

 オフは青木宣親の自主トレーニングに同行し、「体の使い方やトレーニングの仕方も教わって、それがプラスになっていると思う」と貪欲に教えを吸収した。さらに、打撃では内川聖一川端慎吾らに助言を仰いだ。川端からは「コンパクトに打ったら絶対に打てる」と声を掛けられ「ボールが見えるし、変化球も直球にも対応できるようになった」と効果を実感。いずれも、首位打者のタイトルを獲得した好打者の知識を得てジャンプアップを果たした。

理想は万能な打者


9月18日の巨人戦で6回に二塁打を放ち、サイクル安打を達成


 今季は主にリードオフマンとして、強力打線を牽引。9月18日現在、打率.293、12本塁打、47打点。リーグ3位の19盗塁をマークするなどチャンスメーカーとしての役割だけではなく、パンチ力もあり、得点圏打率.330とポイントゲッターにもなれる存在だ。しかし、本人は一番打者があまり好きではないという。週刊ベースボールのインタビューで「一番打者の難しさは感じますか」と問われ、次のように答えている。

「その試合の最初の打席に立つわけで、特にビジターでのゲームなら、1回表の最初に打席があります。やはり、“入り”というのはすごく難しいんですよね。出塁することもそうなんですが、チームに勢いを与えられるかどうかが、僕の1打席目に懸かっていると思うんです。そこが難しいなと感じますね。もちろん、一発目から相手投手に合わせていかなきゃいけない部分も難しい。正直に言うと苦手です(苦笑)」

 しかし、決して後ろ向きではない。目指すべき打者像は明確だ。

「理想は、出塁率を残せて、ホームランが打てて、盗塁もできる選手ですよね。これは一番打者に限らず理想のバッターの姿なので、そういう打者を目指していきたいです。そうなるのが目標というか、野球を仕事としてやっている以上、何でもできるというのは強みになっていくと思いますし、数字を残せるのは、打者として価値あること、評価される部分だと思うんです。なので一番打者でなくても、打率も出塁率もある。打点も稼げる、ホームランも打てる、盗塁もできる。そんな万能な打者でありたいと思います」

 サイクル安打も通過点。今後、ツバメの背番号9がどこまで成長を果たすか非常に楽しみだ。

写真=BBM
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