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川口和久WEBコラム

ビッグボス新庄流の藤浪晋太郎再生を見てみたくないか?/川口和久WEBコラム

 

今までとは真逆から矢を放つ新庄監督


阪神・藤浪


 日本ハムのビッグボス・新庄剛志新監督が「藤浪がほしい」「俺のところに来たら化ける」と発言したことが話題となり、メディアを通して発言したことで物議をかもしている。

 確かにそうだよね。本当に欲しかったら金銭なり交換要員を準備し、トレードの申し出を正式に阪神にすればいいんだから。

 ただ、今年4月で28歳になる阪神・藤浪晋太郎が崖っぷちにいるのは確かだ。

 入団1年目から10勝を挙げ、2015年には14勝した大器。エンゼルスの大谷翔平とは同期で、当初は「投手の力は藤浪が上」とも言われたが、ここ数年はぱっとせず、昨年は4勝5敗に終わっている。

 原因を簡単に言い切ってしまえば、抜け球が多く、カウントが悪くなってからの球を狙い打たれる繰り返しだ。

 感じるのは、フォームに余計な力が入っているということ。投手は、グラブから手を離してテークバックしていくときにリラックスし、一度0に近い状態にするのが重要になる。そこから100の力に持って行くというメリハリだね。

 それが藤浪の場合、完全に力が抜けきっていない。

 ただ、フォームのメカニックについては、これまでもいろいろなコーチが指導してきたと思うし、藤浪自身も課題を自覚し、試行錯誤しているとは思う。

 その過程だと思うので、単純に何が悪いと、はたから簡単には言えない。

 ただ、阪神としては、将来のエース候補をなんとか立ち直らせたいというのはあると思うが、臨時コーチで山本昌を呼んだりもしても、なかなか思うような結果が出ていない。

 1つの障害は藤浪の成功体験かもしれない。こんなはずはない、自分はできるはずだ、という思いがゼロからのスタートを邪魔するというのかな。

 阪神ファンには申し訳ないが、藤浪だけのことを考えれば、環境を変えるのが一番いいのかなとも思う。巨人から日本ハムに移籍したときの大田泰示がそうだったが、チームが変わることでうまくリセットし、新しいものが見つかることがあるからだ。

 阪神は人気球団ゆえのプレッシャーもある。結果が出せないことで自分自身を追い詰めているのかしれない。新庄自身、それを阪神時代に経験しているから、今回の発言になったのだと思う。

 新庄監督にどのくらいの勝算があるのかは分からないが、追い詰められたときの選手は、一言でガラリと変わることもある。たとえば、新庄が「抜け球は打者の恐怖心をあおる武器にもなる。気にするなよ」と言っただけで、変わる可能性もある。

 そんな言葉、誰でも言えるだろと思うかもしれないが、タイミングと受け取る側の心の持ちようで同じ言葉でも響き方が違うことはよくある。

 日本ハム側からしても藤浪の人気、先発で160キロ前後を出せる力は魅力だ。今、先発に上沢直之伊藤大海と2ケタが期待できる二本柱がいるが、そこにもう1本、藤浪が化けてくれたら、戦い方が間違いなく安定する。投手陣が安定すればビッグボスが攻撃面で、より自在になれると思う。

 さらに言えば、阪神は投手の選手層が厚いから、結果が出なくても我慢して使うというチーム状態ではないが、新庄日本ハムなら負けが先行しても使ってくれるかもしれない。

 あとは話題性。新庄監督と藤浪はキャンプから話題を独占することは間違いないだろう。

 昔、プロ野球は娯楽の王者みたいなものだった。だけど、今は娯楽の選択肢がたくさんあって、プロ野球もそのたくさんのうちの一つになってきている。

 新庄を見ていて思うのは、野球界からの話題づくりの発信じゃなく、話題の真っ只中からの発信というのかな。今までとは真逆から矢を放っている。

 それってプロ野球にとって意外と大きなことのような気がするがどうだろう。

写真=BBM
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