グラウンドの司令塔である捕手。「優勝チームに名捕手あり」と言われるように、頂点に立つために最重要ポジションの一つだ。揺るぎない正捕手がいるチーム、複数選手でレギュラーの座を争っているチームとそれぞれだが、果たしてパ・リーグ6球団の「正捕手争い」の現状は? 千葉ロッテマリーンズ
守りでは
田村龍弘に加え強肩の
加藤匠馬が筆頭候補。そこに強打が武器の
佐藤都志也が、割って入る構図がキャンプイン前までは予想されたが、うれしい誤算が高卒ドライチ捕手の奮闘だ。市和歌山高から入団した18歳の松川虎生はA班キャンプで汗を流すと、2月15日の
楽天戦(金武)に代打で対外試合デビュー。右前打をマークすると17日の
巨人戦(那覇)も安打を放ってバットでアピール。マスクをかぶっても堂々とプレーし、
井口資仁監督も「テンポの良いリード。声のかけかたもいい」と存在感を示すルーキーに「楽しみですね」と期待を寄せている。守備と好打を併せ持つ新人捕手が、正捕手候補のダークホースとして、レギュラー争いを盛り上げる。
東北楽天ゴールデンイーグルス
正捕手争いでは大卒4年目の
太田光と高卒17年目の
炭谷銀仁朗がもっともレギュラーに近い位置にいるが、春季キャンプでその座に挑んでいるのがドラフト2位ルーキーの安田悠馬だ。フリー打撃でサク越えを連発し、特守では泥まみれになって鍛えた。五番・一塁で出場した2月17日、
ヤクルトとの練習試合(金武)では7回に中堅へ「プロ1号」2ランを放つなど持ち味を発揮中だ。捕手としての経験は浅く、スタメンマスクへはまだ課題が山積しているが、打での評価は上昇中。新助っ人次第だが、一塁やDHでの抜てきも十分に考えられる。
福岡ソフトバンクホークス
昨年の東京五輪でチームを金メダルに導いた日本を代表する扇の要・甲斐拓也は、シーズンでも全143試合に出場。球団捕手では3人目となる快挙を果たし、正捕手としての存在感は増すばかりだ。とは言え、打撃面ではまだまだ発展途上だ。昨季は自己最多の12本塁打、44打点をマークした一方で、試合数とほぼ同じ142三振を喫した。リーグワーストの数字に、
藤本博史監督も苦言を呈した。それだけに、甲斐自身も打撃力向上に目の色を変えている。今春のキャンプでは
城島健司会長付き特別アドバイザーの指導のもとで「根本から」見直し。試行錯誤した末にたどり着いた形が実戦で結果につながれば、言うことなしだ。今季は守備だけでなく打撃でも格の違いを見せつける。
オリックス・バファローズ
新人・
福永奨がアピールするなど、若手の底上げがあるものの、正捕手候補は若月健矢と
伏見寅威の2人が筆頭だろう。とはいえ、昨季と同様に“併用”が中心となることが予想される。昨季も
山本由伸、
田嶋大樹らが先発の際は若月健矢、
宮城大弥、
山崎福也の登板時は伏見寅威がマスクをかぶり、それぞれの投手の良さを引き出した。伏見寅威に関しては、スタメンでなくても勝負強い打撃も光り、
ジョーンズが退団した今季は代打要員としても計算できる。昨季、開幕マスクをかぶった
頓宮裕真、ベテラン・
松井雅人と捕手層も厚みをましており、競争意識を高めつつ“共存共栄”の“正捕手不在”の体制が現実的だ。
埼玉西武ライオンズ
チームの大黒柱が森友哉だ。連覇を果たした2019年は捕手として史上4人目の首位打者に。しかし一転、20年はプロ入り後、最低の打率.251に終わった。だが、悩み苦しんだ1年を経て、昨季は打率.309と完全復活へのきっかをつかんだシーズンになった。守備面でも年々レベルアップ。若手投手が増えてきているが、積極的にコミュニケーションを取り、リードに生かそうとしている。ただ、球界屈指の“打てる捕手”の存在感が大きいのは事実だが、重労働のポジションだけに森一人でペナントを勝ち抜くのは容易ではない。2番手以降の捕手も重要になるがA班キャンプでは
柘植世那、
牧野翔矢、そしてドラフト3位の
古賀悠斗が競い合いながら練習に励む。さらにB班にはベテランの
岡田雅利がいる。チームは捕手王国への道を着々と歩んでいると言えそうだ。
北海道日本ハムファイターズ
今季、捕手の新戦力は育成2位で入団した
速水隆成ただ一人。昨季スタメンマスクをかぶった4人の捕手のうちの一人、
鶴岡慎也が現役を引退した。昨季81試合で最多スタメンマスクをかぶったプロ8年目の清水優心、40試合でスタメンを任された9年目の
石川亮の中堅2人が、今季も正捕手争いの中心となるが、絶対的な正捕手確立に至っていないのが現状だ。昨季、チーム防御率3.32の投手陣をリードした功績は大きいものの、盗塁阻止率と捕逸数はリーグワースト。特に二盗に関しては120盗塁を許している。三番手の
宇佐見真吾、打撃のいい
郡拓也、昨季のドラフト3位・
古川裕大ら、捕手陣全体の底上げが必要不可欠だ。
写真=BBM