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ベースボールゼミナール

打撃で背筋を伸ばして構える意味と、正しい姿勢とは?「個性を生かすべき」/元ソフトバンク・柴原洋に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は打撃編。回答者は現役時代に巧打の選手として活躍した、元ソフトバンク柴原洋氏だ。

Q.中学で硬式野球をしています。コーチに「背筋を伸ばして正しい姿勢で構えるように」と注意されます。メジャー・リーグを見ていると、ベースに覆いかぶさるように構えていたり、個性的な構えの選手が多いですが、それではダメなのでしょうか。正しい姿勢とは、どういう姿勢のことなのでしょうか。(宮崎県・14歳)


エンゼルス・大谷翔平の構え[写真は2021年]


A.猫背になると低いコースへの対応はスムーズですが高めのボールへの対応が難しくなる傾向にあります

 質問の方はよく見ていますね。例えば、メジャー・リーグの選手で、ベースに覆いかぶさるように打っている選手は、逆に背筋を伸ばすと、ボールとの距離を取れなくて、打てなかったりします。これも個性で、私は全然かまわないという考えです。でも、そのかわり、この構えだと、真ん中から低めへの対応には向いていますが、逆に真ん中から高めのボールで攻められると、さばくのに相応の技術が必要となってきます。苦手なポイントだろうと判断されて、バッテリーから攻められるのは必至です。

 質問の方の上背や体格の情報がないので、こちらの想像でお話ししますが、コーチの方が「背筋を伸ばして構えなさい」と注意をしているということは、背中が曲がっている、猫背で構えていると考えることができます。メジャー・リーガーの例のように、極端にベースに覆いかぶさるような構えではないと思いますが、その彼と同様に、猫背になるとバットを出していくときにヘッドも下がるので、真ん中よりも低いコースへの対応はスムーズですが、高めのボールへの対応が難しくなります。

「いや、自分は高めの対応がうまいんだ」と言うのならば話は別ですが、打席での内容をコーチは見ているでしょうから、高めに弱点があるのではないですか? だからこそ、その弱点に対応できる「背筋を伸ばす」オーソドックスな構えを薦めているのだと思います。

イラスト=横山英史


 すっと背筋を伸ばして立って、バットを持ち、下半身をグッと下げたときに、上半身が変わらず真っすぐになっていると、そこから高め、真ん中、低めと、いずれのコースもスイングがしやすくなります。ただ、背筋を伸ばしてそり過ぎても今度は低めへの対応が難しくなるので注意が必要です。

 私が練習を手伝っている九州共立大の選手にも、覆いかぶさるような構えの選手がいました。ただ、この選手の場合、オーソドックスな構えにすると、逆に打てなくなると考えてそのままに。結果、大学のリーグでホームラン王を獲りましたし、三冠王にも輝いています。プロには進めませんでしたが、今も社会人で頑張っています。つまり、オーソドックスも良いですが、個性も生かしてあげないといけないということ。その場合は、デメリットを見極めて、その対処を考えないといけないと思います。

●柴原洋(しばはら・ひろし)
1974年5月23日生まれ。福岡県出身。北九州高から九州共立大を経て97年ドラフト3位でダイエー(現ソフトバンク)入団。11年現役引退。現役生活15年の通算成績は1452試合出場、打率.282、54本塁打、463打点、85盗塁。

『週刊ベースボール』2022年1月3&10日号(12月22日発売)より

写真=Getty Images
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