技ありのフルスイング
浦和学院の四番・鍋倉は8回裏、右翼ポール付近に豪快な決勝3ランを放った
■第9日第1試合(3月28日)
浦和学院(埼玉)6−3九州国際大付(福岡)
今大会、浦和学院高は「空中戦」において独占状態にある。九州国際大付高との準々決勝で勝利(6対3)し、7年ぶりの4強進出。試合を決めたのは四番の豪快な一発だった。
2点リードを追いつかれた(3対3)直後の8回裏。一死一、二塁から四番・鍋倉和弘(3年)が、ライナーで右翼ポール際へ運んだ。勝ち越しの3ランである。内角の真っすぐに対して、ボールを引きつけ、うまくヒジをたたんでの技ありのフルスイングだった。
「とにかくセンター返しを意識していて、内角に来たら引っ張っていく。少し詰まりましたが、打球が伸びてくれて良かったです」
このアーチには、伏線があった。8回裏、二死満塁から九州国際大付高の四番・佐倉俠史朗(2年)が左前打。同点となる三走の生還は許したものの、二走は左翼手・小林聖周(2年)の好返球により、逆転を封じたのである。
「小林のプレーで流れを持ってきて、打撃で自分たちの持ち味を出せた」
浦和学院高は開幕試合となった大分舞鶴高との1回戦で正捕手の
高山維月(3年)が大会1号本塁打。1回戦16試合で飛び出した本塁打はこの1本のみ。昨年も全32校が登場した段階で3本塁打。コロナ禍での調整不足が懸念されているが、浦和学院高とは無縁だった。
和歌山東高との2回戦では
金田優太(3年)が右越えソロ。九州国際大付高との準々決勝では、6回裏に伊丹一博(3年)が左翼ポール直撃のソロアーチ。そして、鍋倉の決勝3ランが今大会、チーム4本目となった。この試合を終えた時点で大会5本塁打と、浦和学院高が突出している。
打撃強化に取り組んだ成果
鍋倉は言う。
「冬場から打撃強化に取り組んできて、その成果が甲子園で出てうれしいです」
言うまでもなく、ホームランとは一振りで、試合を動かしてしまう。また、球場の雰囲気を一変させる力がある。鍋倉は続けた。
「(甲子園での初めてのベース一周は)とても気持ち良いです。特別な本塁打。人生の中で一生残るものなので、うれしいです」
明日(29日)の休養日を挟み、30日に準決勝を控える。9年ぶりの春頂点まであと2勝だ。
「冬から掲げてきた、全国優勝が目標。チームの勝利を優先に、自分の打撃ができればいいと思います」(鍋倉)
安定感抜群の左腕エース・
宮城誇南(3年)を援護する強力打線。毎年「投高打低」の傾向が出ると言われるセンバツ大会で、浦和学院の異次元の打棒が、甲子園を支配している。
写真=牛島寿人