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2022センバツ

【2022センバツ】近江・山田陽翔は残り「116球」。将来を見据えれば慎重な判断が必要かもしれないが…

 

初戦から4試合連続完投


近江高・山田陽翔は1回戦から4試合連続完投勝利。センバツ初の決勝へと導いた


■第10日第1試合(3月30日)準決勝
近江(滋賀)5−2浦和学院(埼玉)

 残された球数は「116球」である。

 近江高は浦和学院高との準決勝を制し、センバツ初の決勝進出を決めた(夏は2001年に準優勝)。エースで四番の主将・山田陽翔(3年)とバッテリーを組む大橋大翔(3年)が、2対2の11回裏一死一、二塁からサヨナラ3ランを放った。

 山田は5回裏の第3打席で、左足に死球を受けた。その場で倒れ込み、臨時代走が送られるほどの痛み。同イニング終了後、グラウンド整備が終わったあとも治療の時間に充てられた。だが6回以降も気迫の投球を続け、失点を許さなかった。攻守交代の際は左足を引きずりながらも、小走りでベンチに戻る。誰もが痛みを押していることは分かっており、歩いて良い場面でもあったが、主将として攻め続ける姿勢を貫いた。

 チームリーダーの気持ちがナインに伝わる。1点を追う近江高は7回裏に追いつき、2対2のまま延長へ。山田は11回、170球を投げ切った。なぜ、足が踏ん張れなくても投げられたのか。理由は2つある。

「変化球を低めに。真っすぐの投げ分け。相手に的を絞らせなかった」

 これで、初戦から4試合連続完投だ。

▽3月20日
1回戦(対長崎日大高)165球(延長13回)
▽3月25日
2回戦(対聖光学院高)87球
▽3月28日
準々決勝(対金光大阪高)127球
▽3月30日
準決勝(対浦和学院高)170球(延長11回)

 そこで浮上してくるのが、球数制限(1週間500球以内)である。

 1回戦の165球は、すでに準決勝の時点で対象外。2回戦以降がカウントされるため、準決勝を終えて384球。つまり、山田が今大会、投じられるのは残り116球である。2回戦の省エネ投球を除いては、球数を要す傾向があり、一人で投げ切るのは難しいかもしれない。

京都国際高の思いも背負って


 ただ、それよりも気がかりなのは、左足の状態である。試合後の取材は座ったまま受けていた。死球の影響を問われると、山田はお決まりのように「大丈夫です!」と言ったが、「痛みはあるので、決勝に備えて治したい」と続けた。山田は4強に進出した昨夏の甲子園で力投した影響で右ヒジを痛め、秋の公式戦は投げられなかった。肩とヒジのコンディションについての質問には、こう答えた。

「(気持ちが)足のほうにいっているので、肩、ヒジの疲労は感じないです」

 試合後、病院で診断した結果、左足関節外果部の打撲症と診断され、骨には異常がなかった。決勝の出場は当日の様子を見て決めるという。アドレナリン全開だが、これにはリスクも隣り合わせ。山田は決勝に向け「投げられるのであれば、投げさせてほしいです」と前向きに語るも、あくまで故障明け。将来を見据えれば、慎重な判断が必要かもしれない。

 近江高は京都国際高の出場辞退(新型コロナウイルスの集団感染)を受け、開幕前日に繰り上げ出場(代替出場)が決まった。あらためて、グラウンドに立つことができなかった京都国際高の思いを背負っているのかを聞かれると、山田は「はい。そうです!」と語った。

「ここまできたので、自分たちの目標である日本一をつかむため、一戦必勝でいきます」

 近江高には、心強い後押しがある。この日、攻撃に入ると、三塁アルプス席の演奏に合わせて、内野席でも手拍子が自然発生した。昨夏の甲子園は無観客(一部の学校関係者のみ)での開催で、今春は有観客(まん延防止等重点措置が解除された3月22日以降は上限2万人が撤廃)で行われている。声を発しての応援はできないものの、拍手という「新様式」が定着した感がある。甲子園のファンは今大会、近江高が出場した背景を知っている。そして、主将・山田が獅子奮迅の活躍。肩入れしたくなるのも、よく理解できる。

 山田が残す「116球」に、どんなドラマが待っているか。相手は昨夏の2回戦で勝利(6対4)した大阪桐蔭高。見逃せない決勝となる。

写真=牛島寿人
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