読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は捕手編。回答者は現役時代に強肩強打を誇り1982年の中日優勝時にはMVPに輝いた、元中日ほかの中尾孝義氏だ。 Q.配球についての質問です。いつも初球に何を投げたらいいかで迷います。また0ボール2ストライクになったら、必ず1球外したほうがいいのでしょうか。(神奈川・匿名希望・16歳)
中日時代の中尾氏
A.初球に対する反応は注意して見てください。意外と瞬間的な反応は正直なものです リードに100パーセント正解はありません。あるとすれば「打たれないこと」ですが、そのための方法は無限にあり、いつも同じやり方では通用しません。ただ、ファーストストライクを初球で取れたら一気に楽になるのは確かです。
試合の序盤、特に第1打席は初球から変化球を狙うバッターは多くありませんので、できたら変化球でと思っていました。初球、緩い球でストライクが取れると、そのあとの組み立てが楽になるからです。それを狙ってくるタイプや確実にストライクが取れる変化球がないピッチャーもいますので、その場合は真っすぐで、できるだけ厳しいコースを狙わせました。
ただ、2打席目以降は違います。相手もこちらのピッチャーの状態を見ていますし、ここからはもう読み合いですね。初球から相手がどんな球種を狙っているのか読みながらのリードになります。ただ、ここでもストライク先行は変わりません。常にこちらが有利のカウントで、打者に“考えさせたい”というのがあります。
もちろん、相手バッターのタイプもあります。プロの世界であれば、何度となく対戦しているはずですし、スコアラーの細かいデータが準備されていますので、初球からは手を出さないバッター、初球から積極的にいくバッターと傾向も分かっていると思います。アマチュアの場合、初見のバッターも多いと思いますので、初球はさらに迷うかもしれません。相手のタイプ、狙いが読めないときは、一番ストライクを取れる球を選び、それが真っすぐであれば長打の危険のない外角の低めとなるでしょうか。
イラスト=横山英史
もちろん、その初球に対する反応は注意して見てください。真っすぐ待ちか、変化球待ちかが分かるときもあります。プロであればわざと逆の動きをし、自分の待っている球を投げさせようとするバッターもいましたが、意外と瞬間的な反応は正直なものです。
もう1つの質問ですが、0ボール2ストライクからのボールは絶対じゃないですよ。それをしたらムダなときも当然ありますが、2ストライクから打たれると印象が悪いというのはありますし、ピッチャーも「せっかく追い詰めたのに」となる。あとはベンチからも怒られます(笑)。アウトコースに外して次はインサイドとか高めを投げて低めとか、あるいは、その逆とか。次の球の布石になるような使い方をし、明らかに外すと思っていると判断すれば、ズバッと3球勝負も、もちろんありです。
●中尾孝義(なかお・たかよし)
1956年2月16日生まれ。兵庫出身。滝川高から専大、プリンスホテルを経て81年ドラフト1位で中日入団。89年に
巨人、92年に
西武に移籍し、93年現役引退。現役生活13年の通算成績は980試合出場、打率.263、109本塁打、335打点、45盗塁
『週刊ベースボール』2022年2月28日号(2月16日発売)より
写真=BBM