読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回はバント編。回答者は歴代2位の451犠打を誇る元西武ほかの平野謙氏だ。

Q.コーチにお前はバントが下手とよく言われますが、具体的なことは言ってくれません。どうしたらいいんでしょう。(埼玉県・13歳)

A.いろいろ考え工夫することで楽しくなるはずだし、バットに当てるということでは、打撃にも役立つはず

　具体的なことを言わないとは、乱暴な指導者ですね(笑)。ただ、意外と多いんです。その人は「バントなんて簡単だろ」と思っているので、そういう言い方になるのでしょう。質問者の方の欠点も、これだけではよく分からないので、まずは「どうすればバントを失敗するのか」を挙げておきましょう。

　まず構えが低いのは失敗のもとです。確実に決めようと腰を落として構える人もいますが、こうすると高めの球を見上げるようにして伸び上がって追いかけたり、バットのヘッドを上げてしまいがちです。バントの基本姿勢は半身になってバットを高めのゾーンに平行にし、それより上はボールと捨てればいいし、低めに関しては手とバットではなく、ヒザの曲げ伸ばしで対応します。ここでも手だけで対応し、低めの球の対しバットのヘッドが下がると失敗の確率が高くなります。

　また、外角は構えた場所より遠ければ捨て、内角球に対してはバットを引くのではなく、足を使い、体をずらし対応してください。あくまでバットの形と目との距離は変えず、投球の球道にバットを入れ、優しくボールを捕るようにやると失敗が少なくなります。

　以上は基本的なことですが、バントにも打撃フォームと同じで自分の体形にあったやり方があります。練習で徹底的に繰り返し、なぜ失敗したのかを考え、こうやったらできるんだなというのを見つけてやるのが大事です。

　バッティング練習は面白いけど、バント練習はつまらないからしたくないと思うかもしれませんが、いろいろ考え工夫することで楽しくなるはずですし、バットに当てるということでは同じですから、バッティングにも役立つはずです。

　このコーナーをプロ野球の現役選手が読んでいるかどうかは知りませんが、今のプロ野球はバント軽視と言われながら、大事な場面でバントのシーンが相変わらず多く、どのチームもシーズンで100前後は犠打をやっています。はっきり言えば、バントが下手な選手が増えましたが(笑)、その分、サインが出た際、簡単に決められるようになれば、首脳陣の信頼が厚くなり、出番は多くなります。いくら練習しても損はしませんよ。

●平野謙(ひらの・けん)
1955年6月20日生まれ。愛知県出身。犬山高から名商大を経て78年ドラフト外で中日入団。88年に西武、94年にロッテに移籍し、96年現役引退。現役生活19年の通算成績は1683試合出場、打率.273、53本塁打、479打点、230盗塁。

『週刊ベースボール』2022年2月28日号(2月16日発売)より

写真＝BBM