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【MLB】118年前の大投手の記録がよみがえる… サイ・ヤングvs.佐々木朗希

 

千葉ロッテ佐々木朗の快投は、メジャーでも話題に。しかも伝説の投手、サイ・ヤングの無失点記録までもクローズアップされるなど、歴史をよみがえらせてくれた


 サイ・ヤング賞のサイ・ヤングは1890年から1911年までMLBでプレー、サイクロン(大竜巻)のように破壊力ある速球と鋭く落ちるドロップで打者をねじ伏せ、とてつもない記録を残した。

 通算511勝は史上最多。ほかにも投球回数7356イニング、先発試合数815、完投数749などがトップである。あのノーラン・ライアンは1966年から1993年までとヤングより長い期間プレーしたが、それでも通算324勝、5386イニング、先発数773、完投数222とヤングにはかなわない。

 昔と今とでは野球が違い、比較してもあまり意味がないという結論になるのだが、イチローがジョージ・シスラーの1920年のシーズン安打記録に、大谷翔平がベーブ・ルースの1918年の二刀流に挑むという異例の事態が起こると、数字が主役になり、人々の関心が急速に高まっていく。そして違いを比べるのも面白いとなる。

 今回、千葉ロッテの佐々木朗希の2試合連続の快投が日米で大きな話題になったが、現世によみがえってきたのがサイ・ヤングの1904年の4試合にまたがる24回無安打無失点のメジャー記録だった。間にアスレチックス戦の完全試合が含まれており、これはア・リーグ史上初の快挙だった。

 ヤングの現役時代は、プロ野球が今のようなゲームになる途上だった。1890年23歳でプロ入りし、3年目に36勝で最多勝のタイトルに輝くが、翌93年投球板の位置が下げられた。本塁までの距離が16.92メートルから18.44メートルへと長くなったのはヤングの球が速過ぎたからだ。90年代半ばには、守っている野手がみんなグラブをするようになるが、ウェブもポケットもない代物だった。

 世紀が変わり、今までカウントされていなかったファウルをストライクとし、投手が打者を追い込みやすくなった。加えて試合中にボールの交換は滅多になく、汚れたボールを糸がほつれ出すまで使い、スピットボールやボールに傷をつける行為もルール違反ではなかったため、投げたボールが不規則に変化し、打っても遠くまで飛ばなかった。

 明らかに投手有利の時代で、ヤングが記録を作った1904年は37歳だったが、380イニングを投げ、防御率は1.97である。とはいえ完全試合は難しかったはずだ。打者はホームランを狙わずバットに確実に当ててくるし、機能的とは言えないグラブで、守備力は今よりかなり劣っていただろう。

 ヤングは1897年9月にノーヒットノーランを達成したが、野手が4失策で足を引っ張っている。ちなみにナ・リーグ記録は1938年、史上唯一2試合連続ノーヒットノーランをマークしたレッズのジョニー・バンダミア投手。4試合にまたがり21回2/3、無安打無失点だった。1977年には、インディアンスに在籍していたデニス・エカーズリー投手が3試合にまたがり22回1/3を抑えたが、ヤングの記録には及ばなかった。

 黎明期の大投手の記録に、118年後、20歳の佐々木朗が挑む機会を得た。こういうことが起こるのが記録のスポーツ、野球の面白さの一つなのだ。

文=奥田秀樹 写真=井田新輔
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