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伊原春樹WEBコラム

監督は選手の能力が生きる道を考える。根尾昂が投手本格転向、コンバートで強打が開花した和田一浩/伊原春樹WEBコラム

 

試行錯誤の末に


投手に転向することが判明した根尾。今季は一軍で2試合に登板している


 中日根尾昂が投手登録に変更されるという。大阪桐蔭高で2017年、18年のセンバツでは2年連続で決勝戦のマウンドに登り「胴上げ投手」になっていた根尾。中日にドラフト1位で入団後は遊撃手で勝負することを決断したが、なかなか芽が出なかった。新しく中日指揮官となった立浪和義監督は昨秋のキャンプで根尾を外野にコンバートさせることを明言。外野一本のほうが出場機会は増えるという判断で、オープン戦では打率.304とアピールしたが、シーズンに入るとベンチを温める機会が増えた。

 その間にチーム状況も変化。遊撃は京田陽太が打撃不振でレギュラーが白紙の状態になると、立浪監督は根尾を遊撃で再挑戦させることに。一方で投手への道も模索。春季キャンプ中の2月24日には根尾が岡林勇希石川昂弥の野手と共にブルペンで投球練習する姿が中日球団のYouTube動画で公開され、4月2日の広島戦(バンテリン)では延長12回途中に最後の投手だった森博人が起用されると、根尾がブルペンで投球練習の準備をしている様子がモニターで映し出されていた。5月8日に甲子園で行われたウエスタン・リーグの阪神戦で投手デビュー。そして、5月21日の広島戦(マツダ広島)で9点ビハインドの8回に一軍のマウンドに上がり、15球ほぼ直球で最速150キロを計測するなど1回1安打無失点の好投を見せていた。

 監督としてどのようにして選手の能力を開花させようかと試行錯誤する気持ちは痛いほど分かる。私も2001年秋、和田一浩にコンバートを告げた。1997年、西武に捕手として神戸製鋼からドラフト4位で入団した和田。伊東勤という高い壁もあり、外野を兼任しながらだったが01年には捕手として25試合に出場していた。打力はもともと素晴らしいものがあった。同年、打率.306、16本塁打をマーク。西武は01年、近鉄との優勝争いに敗れ、3年連続で優勝を逃していたが、私はV奪回するためには和田の強打を存分に生かすことが必要だと思っていた。

和田を外野手に専念させると、打撃が大きく花開いた


 さらに、和田は捕手としては“優し過ぎる”のが気になっていた。捕手は打者をあざむくために、ある意味“狡猾”でなければいけない。だが、和田はそうなり切れない。素直なリードに終始してしまうのが物足りなかった。和田は脚力もある。外野手として十分やっていけると踏み、秋季キャンプ前に「ベンちゃん(和田の愛称)、キャッチャーミットは持っていかなくていいから」と告げた。和田は捕手に未練があったようだが、それを受け入れ練習に励むと、02年には打率.319、33本塁打、81打点の好成績を挙げ、優勝に貢献してくれた。

 根尾も投手コンバートで秘めたる才能が開花するか。新たな挑戦を見守っていきたい。

写真=BBM
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