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ベースボールゼミナール

金属バットと木製バットで打ち方は変わる? 「正しい打ち方はどちらも基本的に変わらない」/元巨人・岡崎郁に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は打撃編。回答者は現役時代、勝負強いバッティングで球場を沸かせた、元巨人岡崎郁氏だ。

Q.金属バットと木製バットによって打ち方は変わるのでしょうか。木製バットを使い始めた選手によく見られる傾向などあれば教えてください。(東京都・匿名希望・10代)


選手は春季キャンプでロングティーなどを行い、体力と技術を磨いていく[写真はヤクルトの春季キャンプ]


A.金属、木製どちらのバットでも重要なのはインサイドアウトで振れているかどうかです

 正しい打ち方は金属バットだろうと木製バットだろうと基本的には変わらないと思います。バットのグリップが先に出てきて最後にバットのヘッドが出てくる「インサイドアウト」の軌道で振れているかが、どちらのバットでも共通する正しいスイングと言えます。

 金属バットと木製バットにおける大きな違いは、スイートスポットの広さでしょう。スイートスポットとはいわゆるバットの「芯」、打球がよく飛ぶ部分です。これが金属だと木製に比べボール1〜2つ分広くなっています。そして木製だと、スイートスポットから外れるとバットが折れる可能性が高くなる。バットが折れてしまえば当然打球は飛びません。

 冒頭に出たインサイドアウトですが、この逆、バットのヘッドが遠回りして出てくる「ドアスイング」だと、ボールに差し込まれることにつながるので、スイートスポットから外れやすくなります。金属バットだと、反発力も高く、スイートスポットも広い分、ドアスイングでも打球は飛んでいきますが、木製だとそうはいかない。ここが違いだと思います。

 私は巨人で二軍打撃コーチも経験しましたが、高卒ルーキーの中にはインサイドアウトで振れず、木製バットの対応に苦労する選手もいました。傾向としては上半身・腕の力で打つ選手に多く見られました。上体の力で打とうとすると、どうしてもドアスイングになってしまいます。高校時代から正しくスイングできている選手は、苦労することなく木製バットに対応していましたね。

 では、ドアスイングの選手にどういった指導をしていたかですが、「下半身を使って打とう」と教えていました。そして下半身を使うために、強さと柔軟性の両面に重きを置いてトレーニングを組んでいました。高卒選手はまだまだプロの世界で戦える体ではありませんから、まずは体づくりをしていました。たまに清原和博(元西武ほか)や松井秀喜(元巨人ほか)、大谷翔平(現エンゼルス)のような特別な選手は出てきますが、こういった選手はもちろん話が変わってきます。

 春季キャンプを見ていると、高卒ルーキーはバットをよく折ります。私も高卒1年目のキャンプでは、1カ月間、毎日のようにバットを折っていました。バットが折れるということはドアスイングの証明にもなりますから、折れなくなってくると下半身の力を使えているなと実感するわけです。

 上半身、腕の使い方が上手な選手はいますが、やはり土台となる下半身ができていないと意味がないと思います。よく家にたとえられますが、きれいな家でも基礎となる土台ができていないと、地震や台風で簡単に崩れてしまいますから。

 インサイドアウトで打つために下半身を使って打つ。そのために下半身を鍛えてみてはどうでしょうか。

●岡崎郁(おかざき・かおる)
1961年6月7日生まれ。大分県出身。右投左打。大分商高から80年ドラフト3位で巨人に入団し内野手としてプレー。96年限りで引退。現役生活16年の通算成績は1156試合出場、打率.260、63本塁打、384打点、23盗塁

『週刊ベースボール』2022年9月12日号(8月31日発売)より

写真=BBM
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