トップの位置が低い

「あれ？」

　見ていて、頭の中に疑問符が浮かんだ。

　オリックスのエース・山本由伸のピッチングだ。

　10月22日、神宮球場での日本シリーズ第1戦はヤクルト・小川泰弘と山本の予告先発だった。注目は、2年連続で投手4冠を獲った山本と、ヤクルトの三冠王の村上宗隆がどんな戦いをするのか。それはシリーズ全体の行方を左右する戦いでもあった。

　山本は久しぶりの神宮のマウンドだったらしい。マウンドは傾斜の角度、土の硬さと各球場でまったく違う。合う合わないは当然あるし、最初はちょっと投げにくいだろうなと思っていたら、初回、いきなり塩見泰隆にヒットを打たれ、続く山崎晃大朗に粘られた。

　初球を塩見に打たれ、「こんなはずは」と力んだのかもしれないが、いつもの山本とは違う。リリースポイントが一定せず、トップでのヒジの位置が少し低い。結果的に真っすぐの角度がなく高めに集まり、カーブやフォークといったタテ変化が今一つだった。

　その後もなかなか修正がきかず、全体に球が浮いた状態の中、カットボール、スライダーと横変化の球で勝負していたが、塩見、オスナに一発を浴び、4失点となった。

　もしかしたらヒジにでも何かあったのかと思って見ていたら、5回途中いきなりの降板。左脇がつったような状態になったらしい。脇腹は細かい筋肉組織があり、無理をすると長引く。症状は分からないが、次の登板は難しいかもしれない。

　短期決戦の初戦は重要。第6戦にも登板が予想された山本がヤクルト打線を完全に抑え込めば、一気にオリックスが有利になったはずだ。中嶋聡監督にとっても痛い誤算だろう。

　ただ、両者の力は拮抗し、投手陣はオリックスが上と思っている。巻き返し、昨年のような素晴らしい日本シリーズを見せてほしい。