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リーグ制覇した日体大の“GM”は「金農旋風」で主将としてけん引していた佐々木大夢

 

人生で初めての胴上げ


日体大・佐々木大夢グラウンドマネジャーは三塁コーチとしてチームを鼓舞し、4季ぶり25度目の首都大学リーグ制覇に貢献した


 10月22日。日体大は勝てば優勝の桜美林大3回戦を延長11回の末、4対1で制し、4季ぶり25度目の首都大学リーグ制覇を決めた。

 日体大・古城隆利監督、主将・打田啓将(4年・宇部鴻城高)、副主将・矢澤宏太(4年・藤嶺藤沢高)、主務・北内真太(4年・上尾高)の次に胴上げされたのは、グラウンドマネジャー(リーグ戦登録は学生コーチ)を務める佐々木大夢(4年・金足農高)だった。

「人生で初めて。うれしかったです。監督からも最後は4年生だ! と言われていたんです。出場している4年生は少ないですが、最上級生が意地を見せてくれたと思います。(メンバーから)外れた4年生もスタンドで、全力で応援してくれた。結果で報われました」

 佐々木の出身校を見て、2018年夏を思い出す高校野球ファンも多いことだろう。第100回記念大会において、金足農高は秋田勢103年ぶりの準優勝。エース・吉田輝星(現日本ハム)を擁しての「金農旋風」で、主将としてけん引していたのが佐々木だった。

 将来的な指導者を志すため、日体大に進学。外野手のレギュラーを目指したが「二軍戦にたまに出場していました」と、一軍(リーグ戦メンバー)への道は遠かった。日体大には部の制度として「カットライン」がある。2年春のリーグ戦終了後までに二軍に上がることができなかった場合、学生コーチとなるか、就職コース(スポーツに携わる人材育成)に進むかの選択をしなければならない。

 また、3年春の終了時点で一軍に在籍していないと、2度目の「カットライン」の対象となる。佐々木は1度目の「カットライン」を前にした2年生3月、自ら学生コーチへの転向を申し入れた。「選手を経験した上で学生コーチになったほうが、言葉にも説得力が増す」と、プレーヤーとしての未練はなかった。3年秋を終えた昨年11月、新チーム結成のタイミングでグラウンドマネジャーに就任した。

大学卒業後は一般就職


 グラウンドマネジャー(GM)は、約40人いる学生コーチのチーフ的な役割。約300人の部員を束ねる立場にある。

「主将、主務、GM。この3人が機能しないとチームは崩壊する。手を取り合って運営してきました」

 人のために動く裏方は、悩みが絶えなかった。

「苦しいことばかり。ストレスになることも……。でも、チームが良くなるために、主将の打田らと話を重ねてきました。ウチは日本一を目指せるチーム。勝てるチームだという想像ができるからこそ、現実から逃げずに、部員たちと向き合うことができたと思います」

 大学卒業後は一般就職する。

「社会人としての仕事をしっかりこなしてから、指導者の道を目指したほうがいいかな、と。6月には教育実習で、母校の教壇に立ちました。授業後、野球部の練習も見て、あらためて『高校野球っていいな!』と感じました。一方で、社会経験を積んでから、指導現場に立つほうが、理想的かと考えています」

 いずれは高校野球の監督として、生徒たちを甲子園へ導きたいという。

「金足農業の野球がすべてではありません。日体大では多くの仲間と出会うことができ、全国各地に足を運び、さまざまな野球を学びたい思いもあります」

 学生野球の集大成。日体大は明治神宮野球大会への出場2枠をかけた、関東選手権(11月7日開幕)に出場する。

「神宮に出場して日本一を目指す。高校であと一歩、届かなかった壁を乗り越えたい」

ゲームでは三塁コーチとして、的確な判断力で存在感を発揮している。背番号53は最後の1球までチームのため、身を粉にして動く。

文=岡本朋祐 写真=井田新輔
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