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土壇場で精度の高い投内連係 球際を制して神宮大会の頂点に立った明大

 

「練習どおりにできた」


明大は明治神宮大会で6年ぶり7度目の優勝を遂げた[写真=菅原淳]


 野球はツーアウトから。

 明治神宮大会の大学の部決勝(11月24日)。明大は1対0でリードし、9回表の国学院大の攻撃を迎えた。先発の右腕・村田賢一(3年・春日部共栄高)は、簡単に二死を取った。

 あと一人も、初球、一ゴロ失策で出塁を許す。国学院大は最後まであきらめない。次打者は2球目に一、二塁間へのゴロを放った。

「投げるかな? 行くか、迷いました。でも、村松さんは、いると信じて投げてくる。カバーしようと思いました」(村田)

 投手は9人目の野手、と言われる。練習量の賜物。村田の体は勝手に反応したという。二塁手の主将・村松開人(4年・静岡高、中日2位指名)は抜けそうな打球に追いつき、一塁ベースカバーに入った村田へ送球した。国学院大の四番・青木寿修(4年・国学院栃木高)のヘッドスライディングもあと一歩及ばず、アウトのコール。村田が6年ぶり7度目優勝のウイニングボールを手にしたのである。

 公式記録には「4-1A」と記載されていた。土壇場で明大は精度の高いプレーを披露した。

 2020年から母校・明大を率いる田中武宏監督は言った。

「(11年に就任した)コーチのときから、投内連係はかなり、しつこく言ってきました。投手陣には、できないとリーグ戦では投げられないよ、と」

 主将・村松は淡々と語る。

「打球が飛んできたときに、いつもやっている投内連係だな、と。練習どおりにできた」

先発の村田も好投


1対0。明大が国学院大との決勝を制したのは球際の差だった。左から正捕手・蓑尾、主将・村松、田中監督、完封した右腕・村田[写真=矢野寿明]


 村田はこの日、103球の無四球、5安打完封だ。今秋の早大1回戦でリーグ戦初完封を遂げたが、わずか93球。リズムとテンポの良さを支えているのは、正捕手の蓑尾海斗(4年・日南学園高)が「自分はサインを出して、構えているだけ」と明かす抜群の制球力だ。5勝を挙げた春は45イニングで9四死球、3勝をマークして春秋連覇に貢献した秋は24イニングで5四死球とムダな走者を出さない。

 最速148キロも、アベレージは140キロ前半だ。村田は言う。「球速を求めていた時期もありましたが、それ以外のところを練習してきました。一番は試合をつくることです」。9回表の一塁ベースカバーだけでなく、2回表無死一塁からは、バントを捕球すると、迷うことなく二塁へ送球し、併殺を完成させた。村田のフィールディングは、ピカ一である。

 田中監督は「(球自体は)本来のスピードではないが、カバーし切れるだけのバント処理、『4-1』があった。村田ならではのプレー」と目を細めた。

 ゲームの流れを大きく左右する投内連係。まさしく、明大は球際を制したのである。

文=岡本朋祐
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