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伝統と歴史をかみ締め学生ラストイヤーを戦う早大主将・森田朝陽「天皇杯を奪還することしか考えていない」

 

ロサンゼルス遠征も実施


安部球場[東京都西東京市]にある初代部長・安部磯雄氏[右]と初代監督・飛田穂洲氏[左]の胸像の前で撮影。早大の第113代主将・森田は1901年創部の伝統と歴史をかみ締め、学生ラストイヤーを戦う


 早大は2月10日、早稲田大学野球部の「2023ロサンゼルス遠征」(2月24〜3月4日)の実施を発表した。2014年以来9年ぶり。現地ではオープン戦3試合が行われるほか、少年少女を対象とした野球教室も予定している。

 第113代主将・森田朝陽外野手(4年・高岡商高)が大学を通じてコメントを発表した。今回の遠征の意図、目的を深く理解しており、充実の時間を過ごすことになりそうだ。

「海外への渡航が制限される中、こうして米国遠征を実現できることは、関係者の皆さまのご尽力があってのことだと、感謝しております。この米国遠征で、私たちはたくさんのことを吸収したいと考えています。

 最先端のノウハウを学ぼうと、早稲田大学野球部が日本で初めて米国遠征を実施したように、日本にとって米国は常に仰ぎ見る存在でした。時代は移ろいでも、日本で白球を追う者にとって憧れであることは変わりません。リスペクトの気持ちを決して忘れることなく、最新の技術や思考、そして文化を目で見て、空気に触れ、目指す大学日本一の栄冠につなげたいと思います。

 弊部のOBである、故アイク生原氏が単身渡米をし、その後雑用係からロサンゼルス・ドジャースの元オーナーであるピーター・オマリー氏の専属秘書を務められた功績を少しでも肌で感じ、米国の地でチャレンジャーとして、泥くさく試合に臨みたいと思います」

主将に指名された理由


 森田主将は高岡商高(富山)でもキャプテンを務め、2019年夏の甲子園では一番・中堅として、2年連続での3回戦進出に貢献した。学校評定は5.0の成績優秀者で、社会科学部の自己推薦入試で早大に入学。東京六大学リーグ戦デビューは3年春と、2年間、地道に努力を重ねてきた。昨年は代打の切り札として活躍。春秋の2シーズンで17打数6安打、打率.353、2打点と勝負強さが武器である。

 3年秋のシーズン終盤、練習中に小宮山悟監督から新チームにおける新主将の打診を受けた。レギュラーとして出場してきたわけではない。森田からすれば「驚きの一言」だった。

 なぜ、指揮官はリーダーに指名したのか。

小宮山監督からこう言われた。

「お前の行動と言動を見て決めているから、力を入れる必要はない」

 これほど、勇気づけられる言葉はなかった。森田は早稲田大学野球部の初代監督・飛田穂洲氏の教えである「一球入魂」の精神がたたき込まれた選手だ。小宮山監督は2019年から母校を率いて以降、後輩でもある学生たちに「自律」を求め、グラウンドで心血を注いできた。「一球一球、最善の準備をして、物事に当たる」(森田)。就任5年目を迎えた熱血指揮官の指導方針を真摯に受け止め、体現しているのが森田主将なのだ。

「とにかく、必死にやる。誰よりも声を出し、元気良く、必死にボールを追って、打席では集中してバットを振る。そうした姿を見て、少しでも、周りの部員が『オレもやってやろう!』と、勇気を与える選手になりたい」

 発信力があり同級生、下級生から慕われる存在。1年春から神宮での経験が豊富な遊撃手の副将・熊田任洋(4年・東邦高)と連携を取り、チーム運営を進めている。

 50メートル走6秒1の左打ちの外野手は今春、一番・中堅での出場が見込まれる。

「天皇杯を奪還することしか考えていない。その先に、高校時代に果たせなかった日本一を目指していく」

 朝陽(あさひ)の由来は「朝日のような、心の温かい人間に」。勝利が宿命とされる厳しさの中にも、優しさがある。この凛々しい笑顔を見れば、温厚な人柄が伝わってくる。東京六大学の主将は背番号「10」。チームをけん引する森田主将の輝きは、日に日に増している。

文=岡本朋祐 写真=矢野寿明
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