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低迷が続く名門・法大の救世主 球速へのロマンも追い続ける右腕・篠木健太郎

 

持ち味はダイナミックなフォーム


法大の157キロ右腕・篠木は今春で3年生。残り2年の大学生活での飛躍を固く誓う。周囲を安心させる笑顔がトレードマークだ


 最近では珍しい、ワインドアップだ。大きく振りかぶり、いったん下ろしかけた左足を高く跳ね上げ、二段モーションでタイミングを取る。勢いをつけて打者へ投じるダイナミックなフォームが法大・篠木健太郎(3年・木更津総合高)の最大の持ち味である。

「ステップする左足は、振り上げる高さが高いほど、ボールにより大きなエネルギーを与えることができます。位置エネルギーの法則です。1年秋のリーグ戦を控えた夏場に取り組むと、球速が上がりました。もともと体全体のバネ、瞬発系もあるほうだと思います」

 1年秋、高校時代から5キロアップの155キロを計測した。そして、昨年6月の大学日本代表候補合宿では157キロをマーク。2年生投手で唯一、侍ジャパン大学代表に選出され、ハーレムベースボールウイーク2022(オランダ、4位)でプレーした。

「すべてが収穫でした。プロに行かれた橋本(橋本達弥、慶大-DeNA)さん、青山(青山美夏人、亜大-西武)さんら4年生からは、試合への入り方のほか、学ぶべきことがたくさんありました」

 篠木は2年生ながら主戦投手として期待された昨年、春2勝、秋2勝とポテンシャルからすれば、物足りない数字に終わった。言うまでもなく、球速で優劣を決める競技ではない。理解しているつもりだったが、勝利を追い求める中で、力みからフォームを崩したという。

「スピードだけではないと、あらためて強く感じました。真っすぐを生かすための組み立てが大事になる。『勝てる投手』になった上で、結果的に球速がアップしていればいい」

 篠木は木更津総合高1年夏に甲子園の土を踏み、「関東No.1投手」と騒がれた。プロ志望届を提出すれば「ドラフト指名は間違いない」と言われた。しかし、当初から東京六大学でのプレーを熱望していた。中学の学校評定はオール5の超優等生。あこがれだった早大・早川隆久(現楽天)、そして1学年下の法大・山下輝(現ヤクルト)が木更津総合高を経由して、神宮(東京六大学)を目指した姿を見て、群馬から千葉の同校を志望した。

 高校3年時は主将を任されるほど、早大OBの五島卓道監督からの信頼が厚かった。3年夏はコロナ禍で、甲子園をかけた千葉大会は中止。それでも、モチベーションを維持し、県高野連主催の独自大会で優勝へと導いた。相当タフな精神力の持ち主である。2年冬、法大の環境に惹かれ、同校への進学を決めた。

先発完投がポリシー


シーズン前だが、早くも150キロ台を連発。シート打撃でも順調な調整を見せている


 芯が強い。そして、責任感も人一倍。だからこそ、通算4勝の法大での2年間は「情けない。不甲斐ない。納得のいくシーズンは一つもない」と口をつくのは、反省ばかりだった。昨夏、大学日本代表で一緒にプレーした同級生の明大・宗山塁(3年・広陵高)は2年秋までに通算61安打。遠征先のオランダでは同部屋で、仲が良いが「すでに塁君は、東京六大学の顔になっている。自分も残りの2年で、そうなれるように努力をしたい。大学野球を盛り上げたい」と、巻き返しを誓う。

 一冬をかけて、バランスの良い投球フォームを試行錯誤し、確かな手応えを得ている。トレードマークの豪快さを維持しながら、進化を目指す。小さくまとまるつもりはない。160キロ。球速へのロマンも、追い続けている。

 法大は昨秋、勝ち点1の5位に低迷した。上級生となった今年、3年生・篠木は早くもリーダーの自覚が芽生え「チームに必要なことは、発信していきたい」と意欲的に語る。

「マウンドに上がった以上は、誰にも譲りたくない」と先発完投をポリシーとする。今春は対戦する5校からそれぞれ1勝を挙げ、シーズン5勝が最低ノルマ。「リーグ優勝、日本一を、自分のピッチングで形にしたい。2年後のドラフトでは、1位指名されるビジョンを描いています」。青写真を実現させるためにも、大学3年の位置づけは重要なポイントだ。

 2023年春。篠木はもう一つの武器である満面の笑みで、チーム全体に安心感を与える。低迷が続く名門・法大の救世主へのキーマン。名実ともに、絶対的エースへと上り詰める。

文=岡本朋祐 写真=桜井ひとし
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