オリックス・バファローズの「51」
この2回、第1回および第2回WBCの主役といえるイチローの「もしも」を考察してみた。1年目から活躍していた場合はともかく、メジャー移籍のない場合は、結果的には日米通算4367安打もないことになるのだから、その点では寂しい「もしも」だったかもしれない。
一方、20世紀とともにイチローが離れた実際のオリックスは、苦難の道を歩んでいる。2001年オフにイチローを見出した
仰木彬監督が退任すると、そこから3年連続で最下位。その3年目こそ、球界再編の嵐が吹き荒れた04年だ。近鉄が“消滅”し、これをオリックスが吸収するような形で合併。近鉄とオリックスの両方を指揮した経験のある仰木監督が復帰して1年だけ指揮を執った。このとき、イチローが自身の背番号で空き番となっていた「51」を仰木監督に着けるよう提案した、というエピソードもある。仰木監督は「そんな恐ろしいことができるか」と固辞したというが、このとき、もし「イチロー、お前が帰ってきて着ければいいだろ」となっていたら、どうだっただろうか。そんなやり取りもあったのかもしれないが、もちろんイチローのオリックス復帰は実現していない。
とはいえ、それが実現していたら……というのが、今回お届けする夢の世界だ。その舞台は現在のオリックス・バファローズとなった05年。近鉄の選手たちはオリックスと新たに誕生した
楽天との間で、いわゆる分配ドラフトで敵と味方に分かれることになり、オリックスには近鉄の選手に加えてイチローが加わる、という想定だ。
迷うのはイチローの打順。守備位置は右翼で問題ないと思われるが、今回は05年のマリナーズでの打順ではなく、前回と同様、オリックス最後の四番打者として05年のベストオーダーに入れてみる。
1(左)
村松有人 2(二)
平野恵一 3(中)
谷佳知 4(右)イチロー
5(指)
クリフ・ブランボー 6(一)
北川博敏 7(三)
後藤光尊 8(遊)
阿部真宏 9(捕)
日高剛 実際のベストオーダーは?
イチローを四番打者として入れたことで、実際の一番から三番までに右翼手がいなかったため、そこはそのまま。実際の四番打者から打順を繰り下げ、右翼手をラインアップから外してみた。いつもの機械的な作業だ。つまり、ここで五番を打っているクリフ・ブランボーが実際の四番ということになる。この05年のブランボーは打率.263、19本塁打、57打点で、四番打者としては、いささか頼りない数字だ。もし05年にイチローがいたとしたら、一番や三番ではなく、00年と同様、主に四番を打っていた可能性は高そうだ。外野守備の面でも、かつてのチームメートでもある谷佳知の中堅に、ダイエー(05年から
ソフトバンク)から来て2年目の村松有人が左翼で、かつての鉄壁の布陣に近づく印象もある。
ただ、ここでイチローに弾き出される形となった実際の右翼手はカリーム・ガルシアで、実際のベストオーダーでは七番にいるのだが、出場は100試合で規定打席には届いていないものの、打率.307、21本塁打、60打点いう好成績。8月には楽天を相手に2試合連続3本塁打、つまり2試合で6本塁打というメジャーにもない世界で初めての快挙もあった。戦略的には、
ガルシアが指名打者として打線に並ぶ布陣も考えられそうだ。
実際は、2005年のオリックスは4位。3位の
西武とは3ゲーム差で、これが覆れば、このシーズンから始まったプレーオフで勝ち抜くことでリーグ優勝も見えてくる。それ以前に、球界再編の傷跡も残っていたシーズンにあって、イチロー復帰の明るいニュースはリーグの雰囲気を変えたのではないだろうか。では、続きはファンの皆様の夢の中で。
(オリックス2005年のベストオーダー)
1(左)村松有人
2(二)平野恵一
3(中)谷佳知
4(指)クリフ・ブランボー
5(一)北川博敏
6(三)後藤光尊
7(右)カリーム・ガルシア
8(遊)阿部真宏
9(捕)日高剛
文=犬企画マンホール 写真=BBM